オランダの世界遺産運河の護岸改修プロジェクト

オランダの世界遺産運河の護岸改修プロジェクトで技術開発連携協定

「ジャイロプレス工法」と「GRBシステム」による施工イメージ図

グループ企業の技研ヨーロッパを中心とした合弁会社「G-Kracht B.V.」は、アムステルダム市が公募したオランダの世界遺産「アムステルダムの環状運河地域」の護岸改修に関わる新技術開発提携の審査おいて、世界で活躍する技術を有する16グループの中で圧倒的な最高評価を受け、市と連携協定を結びました。実証施工は2022年9月着工、圧入工程は同年11月からスタートしています。実証施工が成功すると、8年間にわたり圧入工事(計3.3㎞以上)を独占受注できる「商業化フェーズ」に移行します。さらに次のステップとして、200㎞の改修区間において、圧入技術を標準工法とした工事が見込まれており、オランダでの工法普及が一気に進むとみています。

協定締結の背景

アムステルダムの運河では近年、木杭の腐食や洗掘で護岸の崩落が相次いでいます。しかし、その改修は沿岸の生活道路や駐車場の使用、地下インフラの迂回工事、居住用ボートや景観を損なう恐れのある樹木の移設などの難しい課題が壁となり、従来工法では遅々として進んでいません。

そこで市は2018年、工事を加速する新技術開発をテーマに世界中から提携パートナーを公募。技研ヨーロッパは協働契約を結ぶ同国のデ・コーニング社、地元ゼネコンのヴァン・ゲルダー社と「G-Kracht B.V.」を結成し審査に臨みました。応募した16グループは一次(書類)選考で6グループに絞られ、その後最終(面談を含む)選考に進みました。一次、最終を通して13か月余りに及んだ審査の末、市は20203月に3グループをパートナーとして選定しました。なお、最高評価(5点満点で4.6点、2位は3.8点、3位は2.7点)を獲得したG-Kracht B.V.は同年513日に正式認定、表彰されました。

採用理由

従来工法は、仮設護岸を設置後に既存護岸を撤去し、新しい護岸を造っていくという昔ながらの煩雑な工程が必要で、工事スペースの確保や大掛かりな作業用仮設工事に多大な時間と費用がかかります。地元住民は、世界遺産の景観が変わる恐れがあることに強い懸念を抱いています。

一方、日本ではすでに多数の実績を持つ「ジャイロプレス工法」は直接既存護岸を貫いて杭を圧入できるため仮設護岸や撤去工事が不要。「GRBシステム」は施工した杭上を自走でき、運河沿いのスペースや仮設桟橋を必要としません。審査では、当社の全く新しい技術・工法により、従来工法の無駄を省きつつ工事の影響を最小限に抑えて景観を守ることができる利点に加え、低振動、低騒音の特長が評価されました。

協定、実証施工概要

協定名 :Samenwerkingsovereenkomst voor de Onderzoek- en Ontwikkelfase van het Innovatiepartnerschap Kademuren (AI 2018-0423)
(アムステルダム市運河護岸イノベーションパートナーシップの研究開発フェーズに関する協力協定(AI 2018-0423))
協定者 :オランダ・アムステルダム市とG-Kracht B.V.

< G-Kracht B.V.構成社>
・技研ヨーロッパ
・Gebr. De Koning B.V.(デ・コーニング社)
・Van Gelder B.V.(ヴァン・ゲルダー社)

業務名 :AI 2018-0423 Innovatiepartnerschap Kademuren Gemeente Amsterdam
(AI 2018-0423 アムステルダム市運河護岸イノベーションパートナーシップ)
工事場所 :Singel 284, 1015BB Amsterdam
発注者 :アムステルダム市
元請業者 :G-Kracht B.V.
施工者 :G-Kracht B.V.
使用機材 :ジャイロパイラー GRV0611e、クランプクレーンCB2-11
杭材型式・寸法 :鋼管杭(直径508㎜、長さ13.75m~25.73m)271本
実証施工期間 :2022年9月~2023年7月予定
圧入工工期:2022年11月~2023年3月

施工断面図

実証施工の様子