戦後の高度経済成長期(1955年~1973年)、建設ラッシュに沸く日本において、打撃や振動を用いる杭打機は「建設公害の元凶」と言われていました。
かつて杭打機は”建設公害の元凶”だった
「ないならば自分でつくる」-サイレントパイラーⓇの誕生-
北村精男が「公害対処企業」を掲げて前身の「高知技研コンサルタント」を創業したのは高度成長期の1967年。振動も騒音も出さない杭打ち機を国内外で探したものの実用的なものは見つからず、「自分でつくってやろう」と一念発起。北村は温めていたアイデアを方眼紙に描き、それを基に垣内商店(現・株式会社垣内)の垣内保夫氏(故人)と二人三脚で開発に着手しました。そして1975年、”静かな杭打機”「サイレントパイラー」が誕生しました。
既設杭の引抜抵抗力で機体を安定させ、静荷重で圧入
一般に、建設機械は機械自体の重量で機体を安定させるため大型化してしまいます。振動、騒音を抑えるため、杭をたたいたり震わせたりするのではなく、押し込んで貫入するとしましょう。機械重量で機体を安定させる仕組みでは、仮に100t の力をかけると、100t 以上の機械重量がなければ機体は浮いてしまいます。当然、機械は巨大化し、実用性は薄れます。
一方、サイレントパイラーは既に打ち込まれた杭を数本つかみ、その引抜抵抗力で機体を安定させ、油圧による静荷重で杭を押し込んでいきます。やわらかい雪の上に立ち、地中深く根を張った大根を引き抜く様子を想像してください。大根は引き抜けず、足が雪に沈みます。
例えるならば、この時の足が圧入中の杭、腕や胴部がサイレントパイラー、大根が既に打ち込まれた杭です。「引き抜く力」を「押し込む力」に転用しているのです。
そのため、サイレントパイラーは軽量な機体重量でも100t 以上の力を発揮できるのです。
「これは静か!」。当時の新聞も驚き
機械重量で機体を安定させる必要がないため機械の軽量・コンパクト化が可能ですし、静荷重で杭を押し込むため、無振動・無騒音で貫入することができます。
サイレントパイラーの現場デビューは1号機誕生翌年の1976年。当時の地元紙には、「これは静か!」とイノベーションへの驚きを伝える見出しが躍っています。
「無振動・無騒音」「省スペース」にとどまらない優位性
サイレントパイラーは杭上で自立しています。つかむ杭を前後で変えることにより「自走」が可能で、傾斜地や水上でも機械を置くための仮設ステージは不要です。これを発展させ、全ての機械装置が杭上で稼働できる「仮設レス施工」を実現したのが「GRBシステムⓇ」です。
圧入技術には主に以下のような優位性があります
・無振動・無騒音
・機械は軽量、コンパクト
・作業用仮設工事が不要(既設杭上で作業するため)
・高精度施工(力点が杭先端に近いため)
・高い安全性(既設杭をしっかりとつかんでいるため、原理上転倒の危険性がない)
さらに、圧入で地中深く押し込まれた杭で構築された「インプラント構造物」は、地震や津波などの外力に粘り強く耐える特長があります。工法にも、構造物にも優位性があるのです。
世界中で社会課題の解決に貢献
「公害対処企業」として創業した当社の原点は「社会課題の解決」にあります。サイレントパイラーの誕生以来、圧入技術は多様な優位性を活かしてさまざまな社会課題にソリューションを提供し続けてきました。住宅近接地、狭隘地といった現場制約条件の克服、激甚化する自然災害から命を守る強靭なインフラの構築、仮設レス施工による工費・工期の縮減と二酸化炭素の排出削減、技能労働者不足に対応し、生産性を向上させる最先端の自動運転技術——。その採用実績は年々拡大しており、現在は世界40以上の国と地域に広がっています。
技術開発と提案活動で世界を変える「グローバルエンジニアリング企業」
当社は生産拠点を持たないファブレス企業ですが、技術開発のみに特化した企業かと問われれば、答えはノーです。当社は圧入技術や粘り強いインプラント構造物を国や自治体、民間に提案し、その優位性を理解・納得させて採用に結び付けることで、世界中で自ら創造した圧入市場を拡大させています。
また、グループ企業やパートナー企業と連携することにより、企画・計画から施工、完成後の機能維持管理まで全体を最適化して提供するパッケージ展開を推進しています。「グローバルエンジニアリング企業」を名乗るゆえんです。
計り知れないポテンシャル
圧入技術でなければできない工事、圧入技術であれば合理化できる工事は世界中に数多く存在します。その優位性のもつポテンシャルは計り知れません。
しかし、世界はまだ圧入技術を知らない。
だからこそ技術提案し、そのインパクトを最大化すべく技術を磨く。その積み重ねの先に「工法革命」があると確信しています。