宇宙建設革新プロジェクト

「インプラント工法」による月面での建設イメージ図

政府「宇宙開発利用加速化戦略プログラム」(スターダストプログラム)の一環の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」(国交省及び文科省連携。略称、「宇宙建設革新プロジェクト」)において、「技術研究開発(R&D)」ステージで技術の開発や実証に着手しています。

※参考:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001089.html)
※詳細については過去のニュースリリース(GKN21NW016JA)(GKN22NW011JA)(GKN24NW011JA)もご覧ください。

宇宙でも生きる「圧入技術」

当社の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」やシステム機器は他の杭打ち機と異なり、地盤に打ち込んだ杭をつかみ、その引き抜かれまいとする抵抗力(反力)を利用して次の杭を打つことができるため、機械重量で機体を安定させる必要がなく、原理上、無重力空間でも施工できます。

「技術研究開発(R&D)」ステージでの取り組み概要

当社は2021年度に実現可能性の検証(F/S)を行い、2022年度から技術研究開発(R&D)に着手しています。最長2025年度までの期間で、「回転切削圧入の施工データを利用した、月面建設の合理的な設計施工プロセスの提案と評価」を行います。

通常の建設プロセスは「調査」→「設計」→「施工」

一般に、地上での建設プロジェクトにおいて、施工に至るまでのプロセスは「調査(地盤の抽出調査)」「設計」「施工」の順に進められます。調査には専用機材が必要となるうえ時間を要するため、輸送物資に制限がある宇宙空間では、地上のプロジェクトに比べて実施数が限られることが考えられます。また、施工時に想定と異なる地盤が出てきた場合は設計変更が必要となるケースがあります。

「PPTシステム」で3工程を同時に。プロセスを合理化

「PPTシステム(Press-in Piling Total System)」を用いれば、調査情報が限られていても、施工データから推測した地盤情報を利用して情報を補完したり、設計の妥当性を検討したりすることが可能。また、施工が完了した杭の支持力を測定するための載荷試験を、圧入機を用いて簡易的に行うこともできます。月面のように調査情報が非常に少ない場合、一旦ラフに設計した後、調査を兼ねた施工をしながら詳細設計を行うというプロセスにすることで、効率的に構造物の性能を確保できると考えられます。物資の輸送量や工程の実施数が制限される宇宙空間において、資機材の削減、工期の短縮にも貢献できます。

※詳細はこちら:PPTシステム

具体的な取り組み

2023年度までに、回転切削圧入をはじめ当社技術に関して、月面での妥当性を検証しました。水がほとんど存在しない月面想定地盤(密な砂地盤)での実大実験や、月面模擬砂(FJS-1g)での模型実験を実施し、回転切削圧入などが適用可能であることを確認。その他、次年度以降のケーススタディーに備えて、当社技術によって建設する構造物の絞り込みや構造形式の検討などを行いました。

2024 年度は、絞り込んだ構造物を対象に試設計を行い、施工データを設計へ反映させるまでの具体的なフローを検討するなど、これまでに得た知見を活かしてさらなる検証を進めてまいります。

※詳細はこちら:ジャイロプレス工法® 

今後の展望

月面の地盤についてはほんの表層部分しか分かっておらず、圧入技術で取得した地盤情報は、将来的に様々な構造物を建設する際の基礎情報にもなります。また宇宙での建設活動を想定した設計、施工プロセスの合理化は地上での建設技術の大きな向上に結びつけることが可能であり、建設のあり方を大きく革新するポテンシャルを秘めています。

当社は、今後宇宙へとフィールドを広げ、世界中で稼働しているサイレントパイラーが月や他の惑星でも活躍する未来を目指していきます。

 

※出典:国土交通省の記者発表資料(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001739791.pdf