
「インプラント工法™」による月面での建設イメージ図
宇宙でも生きる「圧入技術」
当社の杭圧入引抜機「サイレントパイラー™」やシステム機器は他の杭打ち機と異なり、地盤に打ち込んだ杭をつかみ、その引き抜かれまいとする抵抗力(反力)を利用して次の杭を打つことができるため、機械重量で機体を安定させる必要がなく、原理上、無重力空間でも施工できます。
「技術研究開発(R&D)」ステージでの取り組み概要
当社は2021年度の可能性検証(F/S)フェーズを経て、2022年度より技術研究開発(R&D)フェーズの継続審査をクリアしながら活動を進めてきました。本フェーズでのテーマは、「回転切削圧入の施工データを利用した、月面建設の合理的な設計施工プロセスの提案と評価」です。
通常の建設プロセスは「調査」→「設計」→「施工」
一般に、地上での建設プロジェクトにおいて、施工に至るまでのプロセスは「調査(地盤の抽出調査)」「設計」「施工」の順に進められます。調査には専用機材が必要となるうえ時間を要するため、輸送物資に制限がある宇宙空間では、地上のプロジェクトに比べて実施数が限られることが考えられます。また、施工時に想定と異なる地盤が出てきた場合は設計変更が必要となるケースがあります。
「PPTシステム™※」で3工程を同時に。プロセスを合理化
「PPTシステム(Press-in Piling Total System)」を用いれば、調査情報が限られていても、施工データから推測した地盤情報を利用して情報を補完したり、設計の妥当性を検討したりすることが可能。また、施工が完了した杭の支持力を測定するための載荷試験を、圧入機を用いて簡易的に行うこともできます。月面のように調査情報が非常に少ない場合、一旦ラフに設計した後、調査を兼ねた施工をしながら詳細設計を行うというプロセスにすることで、効率的に構造物の性能を確保できると考えられます。物資の輸送量や工程の実施数が制限される宇宙空間において、資機材の削減、工期の短縮にも貢献できます。
※詳細はこちら:PPTシステム™
具体的な取り組み
2025年度までに、水がほとんど存在しない月面想定地盤(密な砂地盤)での実大実験や、月の模擬砂(FJS-1g)での模型実験などを実施しました。これにより、回転切削圧入※による杭の施工が可能であることや、杭の形状や地盤の深さといった条件が異なる場合でも、圧入施工データから地盤情報が適切に推定され得ることなどを確認。さらにケーススタディとして、月面建設の初期段階に有効となり得る構造物を具体的に設定し、地盤情報が少ない状況を前提としたラフな設計を試行しました。
2026年度は、引き続き密砂での実大野外実験や、月の模擬砂を用いた模型実験などを行い、地盤情報推定の精度向上など残された課題の解決を図ります。あわせてケーススタディの内容を深化させ、月面での合理的な建設プロセスの実現に向けて、圧入施工データの活用がどのように有効となり得るのかをより具体的に示していきます。
※詳細はこちら:ジャイロプレス工法™
今後の展望
月面の地盤についてはほんの表層部分しか分かっておらず、圧入技術で取得した地盤情報は、将来的に様々な構造物を建設する際の基礎情報にもなります。また宇宙での建設活動を想定した設計、施工プロセスの合理化は地上での建設技術の大きな向上に結びつけることが可能であり、建設のあり方を大きく革新するポテンシャルを秘めています。
当社は、今後宇宙へとフィールドを広げ、世界中で稼働しているサイレントパイラーが月や他の惑星でも活躍する未来を目指していきます。