『国土崩壊 -「土堤原則」の大罪』に関するQ&A

皆様からお寄せいただいたご質問にお答えいたします。

Q.インプラントロック堤防の施工にはどれくらいの費用が必要なのでしょうか?

A.施工費用は地盤条件や施工場所によって大きく変わり、一概には言えません。これは他工法も同様です。
誰もがコストを一番に重視しますが、コストだけを考えればベニヤ板やブルーシートで造れば一番安く済みます。しかし、防災構造物は壊れてはいけない「責任構造物」であって重要な使命を持っています。激甚化する豪雨災害によって河川堤防の決壊は今後も増えると予想され、その被害額は壊れない堤防を構築する費用とは比較にならないものになります。科学技術による時代の最先端機材と最新工法をもって責任構造物を構築することこそが、コストの観点からも見てもベストな選択肢です。

前例主義を踏襲する国は河川堤防について、原則として土を盛った「土堤」とすると法令(河川管理施設等構造令19条)で定めています。堤防内に土以外のものを入れてはいけないというこの決まりがいわゆる「土堤原則」です。土堤原則に沿った決壊対策は安価かもしれませんが、毎年のように多数の集落が水没し、100人以上、またそれに迫る人が亡くなっています。結果的に費用面では、土堤原則を踏襲して行政が進めている「壊れる堤防」造りこそが最も高コストになると言えます。何より、命の犠牲はお金に換算することができません。責任構造物はコストではなく、壊れないという原理原則が最重要なのです。

インプラントロック堤防は豪雨にも地震にも耐える壊れない堤防です。このような決壊しない構造体を最新の科学で造ることのできる技術を世界中から公募すれば良いのです。当社の技術は、海面より低地で生活している水の国・オランダの首都が「新しい堤防の技術開発提携」をテーマに実施した国際公募において、世界一の評価を得て施工が決まっています。古い考え方を打破し、最新の技術を取り入れる行政の「思考革命」は欧米では当たり前です。土堤原則を転換し、全国の大小河川を新しい構造体に変革することを国が決定すれば、国内産業も活性化します。


以下、当社の考えるインプラントロック堤防の優位性を説明します。

【安全性、経済性】
インプラントロック堤防は、自然のあらゆる攻撃に対して壊れない科学的な体質を持った「構造体」です。防災構造物は気まぐれな自然災害に粘り強く対抗し、壊れないことが基本中の基本です。今の行政は防災構造物について壊れることを前提としています。その思考や対応は、越水時に壊れるまでの時間を遅らせるとか、破堤したときに被害をどう抑えるか、いかに逃げるかに重きを置いており、安全性は軽視しています。
インプラントロック堤防は、洪水による3つの破堤要因(越水、浸透、浸食)に加え、地震による振動や液状化による地盤沈下に粘り強く耐える壊れない堤防です。他工法では越水対策とは別に浸透や地震対策などが必要となるケースもあり、総合的に見れば決して経済的とは言えません。

【急速性】
インプラントロック堤防は、今ある堤体をそのままに、内部に新しい構造体を構築するものです。工事中に自然災害に襲われる可能性があること、また構造体が国民の命と財産を守る使命を持っていることから、工事は一秒でも早く完了することが大切です。インプラントロック堤防を構築するインプラント工法は、使用機材がコンパクトなため複数パーティーで工事を同時進行できます。加えて、作業用仮設工事の要らないシステムで施工するため、最短工期で完成させることができます。

【環境性、文化性】
インプラントロック堤防は、都市河川の施工において真価を発揮します。圧入原理の優位性を生かしたコンパクトな機械と自動運転システムは、既存の大型機の入れない狭隘地で大いに活躍しています。また、圧入技術は既存工法のように騒音や振動などの公害を出しません。目的に最適な構造部材「許容構造部材」を工場生産し、現場で設置するだけのシンプルな工程で施工できます。従来工法による将来的な撤去を想定していない、あるいは撤去に膨大な手間がかかる構造物と異なり、圧入によって構築した構造物は、部材を引き抜くだけで簡単に撤去できます。この新しい施工機械システムや工法自体が環境性、文化性に富んでいます。


Q.堤防内に圧入した鋼矢板は腐食してしまうのではないのですか?

A.一般社団法人「鋼管杭・鋼矢板技術協会」が20113月に出版した本(【鋼管杭・鋼管矢板・鋼矢板】防食ハンドブックー設計・施工・維持管理―)より引用します。本書には、一年間に腐食する厚さ(ミリメートル)について

・陸上大気中    0.1
・土中(残留水位上)0.03
・土中(残留水位下)0.02
・海底泥層中    0.03

と解説されています。

インプラントロック堤防は、既存の土堤から地下にかけて鋼矢板を圧入して構築します。地中では鋼矢板の劣化の原因となる酸素が少なく、これまでの経験上、構造に影響を与えるような腐食はほとんど進んでいません。設計上では、腐食代(腐食を見込んで持たせた鋼材の厚みの余裕)を確保することで安全性は十分保っています。また、鋼矢板は弾性体であり、割れるなどして破損することはありません、

Q.鋼矢板と土の間に隙間ができたり、水が入ったりしたら堤体が弱くなるのではないでしょうか?

A.インプラントロック堤防は、周辺土堤部の強度には依存せず、自立安定した構造体を鋼矢板の連続で構築し、その構造体自体で洪水に耐える設計です。既存の土堤を補強するのではなく、自立安定した構造体を既存の堤体の中に造るのであって完成すれば既存の堤体はなくても問題ありません。また鋼矢板を地中に設置すると、その瞬間から周囲の土圧によって段々と密着度は増して行くことが分かっています。

時間の経過とともに密着度を増すため、一度打ち込んだ鋼矢板の引き抜きは専門の機械でないとできません。この土と杭の密着の原理が「サイレントパイラー」の発明につながっています。

Q.土堤原則といいますが、都市部にはコンクリートの河川堤防がありませんか?

A.都市部や市街地において十分な用地が確保できないケースなど、特別な事情があってやむを得ない場合は、例外的に鋼矢板やコンクリートを主要部に用いた河川堤防を造っている例があります。この堤防を土堤に対して特殊堤と呼びます。

特殊堤の中でも、外側はコンクリート、内側は土砂となっているものは「モナカ構造」と呼んでいます。モナカ構造は、経年変化で中の土砂が沈下して空洞化が進みます。大地震が来れば外側が煎餅を割ったような無残な状態になり、防災構造物の使命は果たせません。過去の地震災害が示すように、コンクリートで被覆した堤体は先にやってくる地震で破壊され、次に襲ってくる津波を防ぐ余力などを備えていない状態になります。

Q.インプラントロック堤防はどこから整備していけばいいのでしょうか?

A.決壊の危険度の高い部分から順次施工していくべきです。危険箇所は地形条件などから推測できます。一度に整備できなくても、その延長を年々拡大していく「防災構造物の積立貯金」の考え方で科学に裏付けされた構造体を構築していくことが、国民の安全安心を守ることにつながります。

前例主義を踏襲する行政のやり方は「造っては壊され、壊れては造り」を繰り返すことで多大な犠牲を生み、多額の税金を泥水に流しております。インプラントロック堤防は現代の技術の粋です。行政の「思考革命」により、一日も早く全国の河川に適用されることを望んでいます。