GIKEN圧入技術マガジンvol.04

2021.8.31 メールマガジン

 <工法提案> 

「既設杭上のみ」「省スペース」
スピーディーに土砂災害対策
~地盤を乱さず施工。復旧、事前防災に有効~


 ■日本は「土砂災害大国」
日本は土砂災害が非常に多い国です。土石流、地すべり、がけ崩れを合わせると、年平均で1000件以上発生しています。激甚化する豪雨により近年、その危険性は増しています。

今回は土砂災害の復旧、事前対策の提案を3つご紹介します。土砂災害対策工では急速性と不安定な地盤を乱さない安全性が必須です。また非常に限られたスペースでの施工が求められる現場も少なくありません。硬質地盤を打ち抜く鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー」や飛び杭施工を効率化する「スキップロック工法®」、既設杭上で全圧入工程を完結する「GRBシステム」などを用いることで、急速かつ安全で省スペースな施工を実現します。

※ 杭間に間隔を空ける施工法のこと

➀インプラント地すべり抑止杭

まずはインプラント地すべり抑止杭の施工動画をご覧ください。傾斜している複雑な地形において大規模な整地なしで、既設杭上のみで施工している様子がお分かりいただけます。

※ 安定地盤にまで打ち込むことで土塊を固定する杭のこと。地すべり抑止杭では地下水を通すため飛び杭施工を行います。

地すべり抑止杭の施工事例 長崎県東彼杵町

■九州新幹線西九州ルート沿線(長崎県東彼杵町)の施工事例
動画でご紹介したのは、九州新幹線沿線の橋りょう工事に伴う地すべり抑止杭の施工現場です。地すべり防止区域に指定されている現場は傾斜している複雑な地形でしたが、スキップロック工法とGRBシステムの併用により、不安定な地盤を乱す大規模な整地作業をすることなく、杭上のスペースのみで急速施工しました。

■従来工法では地盤を乱す恐れ
地すべり抑止杭は埋め込杭が主流です。埋め込杭工法は杭を埋め込む前に大口径ボーリングマシンで地盤を掘削するため、本件のような地形が複雑なケースでは大規模な整地や杭周辺への仮設構台の設置が必要となります。しかし本現場では、そうした作業が不安定な地盤に影響を及ぼす恐れがありました。

■飛び杭施工を効率化する「スキップロック工法」
【切削爪付き鋼管杭で硬質地盤を打ち抜く「ジャイロパイラー」】
当社の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」は既設杭を機体下部のクランプ(杭把持部)でつかみ、その引き抜かれまいとする力(反力)を利用して機体を固定し、油圧による静荷重で杭を圧入する機械です。

ジャイロパイラーはサイレントパイラーの一種で、スキップロック工法において使用します。ジャイロパイラーは、鋼管杭の先端に切削爪を付けて回転切削圧入することで硬質地盤やコンクリートなどの地中障害物を貫通し、粘り強いインプラント構造物を造ります。地盤に直接貫入できるため、掘削や地盤の置き換えが不要です。

ただ、ジャイロパイラーのみによる飛び杭施工では、本設の鋼管杭の間に仮の短尺杭を圧入する必要があります。仮杭なしで施工しようとすると、杭間が広いことから一部のクランプしか杭をつかめず、十分な反力が得られないためです。

【スキップロックアタッチメントにより仮杭なしで施工】
スキップロックアタッチメントは仮杭なしでも反力を確保できるように開発した装置です。3つのアタッチメントを既設の3本の飛び杭上に固定し、連結部をつなげて使います。


施工時、全てのアタッチメントと飛び杭は油圧で一体化した状態となっています。これにより既設杭3本分の反力を確保できるようになり、仮杭なしで施工可能になります。アタッチメントはクレーンで移動できます。

施工手順については以下の動画をご覧ください。

■既設杭上で全圧入工程を完結させる「GRBシステム」
GRBシステムは、すべての機械装置を既設杭上で自走、稼働させることで、杭の搬送、建て込み、圧入といった圧入施工の全工程を杭上で完結させることができる施工システムです。これにより、工期、工費の縮減が可能です。

飛び杭施工の際はパワーユニットと「パイルランナー®」が移動する専用足場「GRBプラットフォーム」を杭上に設置します。この足場は杭上にワンタッチで取り付けられます。

工事概要
498mの区間に各列(2列)3mピッチの千鳥配置で直径1.2m、長さ31.537.0mの鋼管杭を172本圧入しました。

②インプラント導流堤(二次災害対策)

インプラント導流堤は、土砂災害の現場において再度流出した土砂を受け止め、被害の危険性のない場所に導く堤防です。

2台同時施工の様子

上の写真は、伊豆大島で採用されたインプラント導流堤の施工風景です。現場では2013年、台風26号によって大規模な泥流が発生。崩落斜面に多くの不安定な土砂が残存していたため導流堤が採用されました。現場の下層地盤には硬質な溶岩層が存在していました。

圧入工事では、コンパクトな圧入機が既設杭上で稼働するうえ、他工法と比べて周辺機器を小型化できることなどから工事の影響範囲を最小限に抑えられます。本現場では作業スペースとなる道路の通行止めが許されない中、硬質地盤クリア工法を用いた省スペース・2台同時施工により、道路供用を維持したまま導流堤を急速構築しました。

※ 圧入機と連動するパイルオーガで杭先端の直下地盤を掘削し、パイルオーガを引き抜きながら隙間を埋めるように杭を圧入する工法。硬質地盤への圧入を可能とします。

側面図・横断図

③インプラント砂防堰堤

ジャイロパイラーやスキップロック工法を用いれば、インプラント砂防堰堤を「省スペース」「仮設レス」で急速構築することもできます。砂防堰堤とは、土石流などで上流から流れ出た土砂を受け止め、一度に大量に流出することを防ぎ、下流への被害を抑止するものです。主な工事が鋼管杭の圧入のみのため、短い工期で構築できます。