当社の創業者・北村精男が名誉会長を務める国際圧入学会(拠点:東京都港区、会長:Kenneth Gavin)は、7月3日~5日、「第3回 圧入工学に関する国際会議」(ICPE2024)をシンガポール国立大学(NUS)で開催しました。「持続可能な建設に向けた圧入工法の優位性と気候変動への取り組み」をテーマに、17か国・地域から208名の研究者や技術者が参加。サステナブルな開発に向けた課題や圧入工学の最新技術、研究成果を共有しました。
IPAは、鋼矢板や杭を地盤に静的に貫入する圧入技術の科学的な解明と普及を目的として2007年に発足した学会で、2024年6月末時点で国内外731名の個人と48社の法人が会員となっています。これまで、日本が活動を先導し、第1回の国際会議を2018年に高知県香美市、第2回を2021年にオンラインで開催してきました。
3回目となる今回は、基調講演やテーマ講演、各分野のプレゼンテーション、圧入工法の見学会が実施され、圧入工学の深化を図るため多角的な議論が行われました。初日夜には公式晩さん会も開かれ、今後の発展に向け有意義な意見交換が行われました。次回ICPEは2027年にオランダで開催される予定です。
■開会式
開会式では、ICPE組織委員長を務めるシンガポール国立大学(NUS)のChun Fai Leung教授が、会議の歴史とその意義を述べた後、第3回会議が日本以外での初めての開催であり、多くの地域から参加者を迎えられた喜びと、圧入工学の国際的な普及と発展に重要な役割を果たす場となることを強調しました。
続いて、TUCSSのJeyatharan Kumarasamy元会長、GeoSSのDarren Chian会長、そして国際地盤工学会(ISSMGE)のアジア地域副会長Keh-Jian Shou氏が挨拶を行い、圧入技術の進化と成功事例、都市環境における需要の高まり、そして気候変動や持続可能性への対応について言及しました。
■ICPE表彰式
優秀論文の表彰: 鹿倉瑠斗氏, S M Shafi氏, 中井健太郎氏, 戸田和徳氏,
松澤一行氏, Ram Krishna Mandal氏, 山﨑剛氏
傑出した建設プロジェクトの表彰: City of Amsterdam, G-Kracht(オランダ)
顕著な研究成果に対する表彰: 石原行博氏, 熊曦氏, Vijayakanthan Kunasegaram氏
多年にわたる貢献に対する顕彰: 日下部治氏, 松本樹典氏
初期キャリアエンジニアに対する表彰:持田祐輔氏, Benjamin Bautista Buensuceso III氏
当社からは2名の社員が表彰されたほか、傑出した建設プロジェクトの表彰として、当社グループ企業のGiken Europe B.V.(技研ヨーロッパ)と、オランダの建設会社の Gebr. De Koning B.V.(デ・コーニング社)、Van Gelder B.V.(ヴァン・ゲルダー社)で構成される合弁会社「G-Kracht B.V. (ジークラフト ビー・ブィ)」が昨年パイロット施工を行ったオランダ・アムステルダム市の革新的護岸改修のパートナーシッププロジェクトが受賞しました。
■基調講演
基調講演1: Dr. Shinobu Yume Yamaguchi 山口しのぶ博士
(国連大学サステイナビリティ高等研究所所長、東京工業大学名誉教授)
基調講演2: Prof. Kenneth Gavin(デルフト工科大学教授、IPA国際圧入学会会長)
山口博士は「持続可能な開発目標(SDGs)と気候変動対策の進展」をテーマに講演し、SDGsの現状、気候変動に関する国際的な取り組み、相互に関連するリスクの理解、そしてこれらが持つ意味と影響について講演。Gavin教授は「オフショア再生可能エネルギー産業における圧入工法の可能性」をテーマに、最新のモノパイル設計手法や海底地盤のモデリング、施工対象となる特殊土壌の取り扱いについても触れ、圧入技術が持続可能なインフラ開発に貢献することを示しました。
■テーマ講演と一般セッション:
ICPE2024では、幅広い視点からの発表・質疑が行われました。
テーマ講演では、シンガポールを含む東南アジア地域での圧入工法の適用事例として、Goh Teik Lim博士(シンガポール)、David Liaw氏(シンガポール)、野﨑恒延氏(日本)が講演を行いました。一般セッションでは、ICPEに投稿された64の論文をもとに、圧入工学に関する最新の研究成果や施工事例など、多岐にわたるテーマの発表が行われました。
■圧入工法の実演見学会
会議3日目にはシンガポール市内で圧入工法のデモンストレーションが行われました。昨年、シンガポールに初導入された「ジャイロパイラー®」(既設構造物や地中障害物を打ち抜いて鋼管杭の回転切削圧入を行う圧入機)をはじめ、砂礫や岩盤など硬質地盤への杭・矢板の圧入を可能にした「クラッシュパイラー®」、境界線や隣接構造物に近接した状態で鋼矢板を圧入する「ゼロパイラー®」の3機種が紹介されました。
■国際圧入学会
国際圧入学会(英語名 International Press-in Association、略称IPA)は、地盤工学、環境工学、機械工学、施工技術、計測工学、といった圧入に関連する諸分野を融合した「圧入工学」を推進し、理論と実践を融合させながら、産学官の連携で地盤と構造物の相互作用のメカニズム解明に取組む国際的な学術組織です。
2007年の設立以来、IPAは国際会議やワークショップの開催、学術論文の発表や表彰、圧入工法設計施工指針や圧入技術の適用事例のケーススタディの発行を行ってきました。特に、圧入技術に関する学術的関心を共有する国際的なネットワークの形成と維持発展、技術情報の収集・発信、研究成果や事例の発表の場の提供を通じて、圧入技術の進展と普及に貢献しています。
ICPE2024前日に開催された学会の理事会において、オランダデルフト工科大学のKenneth Gavin教授が新会長に就任されました。
■第三回圧入工学に関する国際会議(ICPE2024)
主催 | ICPE2024 Organizing Committee(ICPE2024組織委員会) International Press-in Association (IPA国際圧入学会) |
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共催 | Centre for Soft Ground Engineering、 National University of Singapore (NUS シンガポール国立大学) Geotechnical Society of Singapore (GeoSS シンガポール地盤工学会) Tunneling and Underground Construction Society (Singapore) (TUCSS シンガポールトンネル・地下建設協会) |
後援 | The Asian Civil Engineering Coordinating Council (ACECC アジア土木学協会連合協議会) |
協賛 | 6か国・地域から17社 Platinum Sponsor: GIKEN LTD. Gold Sponsors: Atsunew Giken Pte. Ltd./Oriental Castle CHUEN CHANG ENTERPRISE CO.,LTD. GIKEN SEKO CO., LTD. GUAN CHUAN ENGINEERING CONSTRUCTION PTE LTD JFE Steel Corporation NIPPON STEEL CORPORATION SATO JUKI Corporation/ENFIVE PTE. LTD. Sliver Sponsors: Daesan Civil Technology Kiso-Jiban Consultants Co., Ltd. THAI FULLMORE CO.,LTD. Bronze Sponsors: FUCHI Pte Ltd JIAN MAN CONSTRUCTION PTE LTD KAKUTO CORPORATION Mlion Corporation Pte Ltd Nippon Chemical Paint Co., Ltd. Ozawa Civil Engineering and Construction Co.Ltd. |
会議テーマ | The Superiority of Press-in Piling towards Sustainable Construction in Tackling Climate Change for Infrastructure Development 持続可能な建設に向けた圧入工法の優位性と気候変動への取り組み |
開催期間・場所 | 2024年7月3日~5日、シンガポール国立大学(NUS)University Town |
参加人数と参加国数 | 登録者数:208名(日本からの参加者:100名)、参加国・地域数:17か国地域(日本、シンガポール、タイ、台湾、オーストラリア、中国、マレーシア、韓国、オランダ、パキスタン、フィリピン、イギリス、アメリカ、ベトナム、ブラジル、カンボジア、ウクライナ) |
会議情報に関する詳細は国際圧入学会公式ホームページでご確認ください