GIKEN圧入技術マガジンvol.16

2023.11.2 メールマガジン

 <事例紹介> 

圧入工法による「流域治水」施策紹介 第2弾!
ため池の堤体補強工事、地すべり抑止杭


今回のテーマは、圧入工法を用いた流域治水施策の第2弾です。
河川の上流側の施策をメインに事例を紹介いたします。

上流域は山間部に位置することから、狭隘かつ地形が複雑な現場で対策工事が求められるケースが少なくなく、工事では不安定な地盤に影響を及ぼさない工法を求められる事例が多々あります。圧入工法ならば、コンパクトな機械が既設杭上で稼働する「省スぺ―ス」「仮設レス」施工および「無振動・無騒音」施工により、どんな施工条件でも周辺環境への影響を最小限に抑えつつ急速施工することができます。

■施策例:ため池の堤体補強工事

【豪雨や大地震でも決壊しない「インプラント堤防」を構築】
高知県室戸市のため池「黒茂谷池」で圧入工法による堤体補強工事が行われた事例です。既存の堤体内へ鋼矢板を2列に圧入し、豪雨や大地震でも決壊しない「インプラント堤防」を構築しました。

【粘り強い構造、堤体に影響を与えない工法が必須】
農業用水を確保するために造成された「ため池」は全国に15万箇所以上存在していますが、その多くは江戸時代以前に築造されたもので老朽化が進んでいます。黒茂谷池においては法面の石積みの変形が進んでおり、対策工では豪雨や地震時にも決壊しない粘り強い構造に加え、施工時の振動等が堤体に影響を与えない工法が求められました。

【インプラント堤防の粘り強さ、「無振動・無騒音」施工が評価】
インプラント堤防は、鋼矢板や鋼管杭の連続壁で構築される堤防で、あらゆる破堤要因に粘り強く耐えます。今ある堤防をそのままに、堤体内に杭を圧入して構築することも可能です。自立した壁体は盛土が越水や浸食で崩れても堤防機能を保ちます。また鋼矢板を二列に圧入して液状化層を囲うことで、地震時に液状化層の流動を抑えて地盤沈下を抑止し、堤防高を維持できます。本件では、これらの構造上の優位性に加え、「無振動・無騒音」施工により堤体の安定性を損なわない工法の優位性が評価されました。

優れた耐震、耐津波性能

【硬質地盤クリア工法により工期を短縮】
また現場の地盤は硬質な玉石層であり、他工法では掘削機で先行掘削した後、砂置換を行って鋼矢板を打設する必要があることから、工事が長期化する課題がありました。一方、硬質地盤クリア工法はパイルオーガを装着した圧入機により地盤掘削と鋼矢板圧入を同時に行うことが可能で、砂置換も不要です。本案件では他工法に比べて工期を短縮できる点も採用の決め手となりました。

施工機械サイレントパイラー F201A
材料鋼矢板 Ⅲw型 矢板長5.5~14.0m 施工枚数53枚
    Ⅳw型 矢板長5.0~14.0m 施工枚数62枚
圧入工期2019年3月~4月

【施工前】

【施工中】

【施工後】

【圧入技術ならば極めて狭い施工スペースでも急速施工可能】
山間部のため池の対策工事では、道幅が狭く、山林が広がることなどから、施工スペースの確保が難しいケースがあります。その点、圧入機は機械自体がコンパクトであり、すべての機械装置(圧入機・パワーユニット・クランプクレーン・パイルランナー)が貫入された杭の上で稼働する「GRBシステム」を用いることで、他工法では施工が困難な狭小な現場条件でも構台や桟橋などの仮設工事なしで急速施工が可能です。

【ため池の決壊は毎年のように発生。対策が急務】
2018年の西日本豪雨では24県の32カ所でため池が決壊し、人命が失われるなど多大な被害を受けました。その後も激甚化・頻発化する豪雨災害を受け、ため池の決壊は毎年のように繰り返されており、対策が急がれています。「省スペース」「仮設レス」施工により工期短縮を実現する圧入工法は、迅速な工事が求められるため池事業にも対応できる工法です。

■施工例:地すべり抑止杭

【不安定な地盤を乱すことなく飛び杭施工を実施】
長崎県東彼杵町の九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)沿線で地すべり抑止杭を施工した事例です。本件では、「GRBシステム」により、不安定な地盤を乱す大規模な整地作業を行うことなく、飛び杭施工を実施しました。

【現場は「地すべり防止区域」。大規模な整地はNG】
傾斜を伴う複雑な地形が広がる一帯は、地すべり防止区域に指定されています。一般的な杭打機で地すべり抑止杭を施工する場合は、機械設置のために大規模な整地や仮設構台の構築が必要ですが、地盤の安定性に影響を及ぼす恐れがあります。工事にあたっては、施工による地盤への影響を最小限に抑える工法が求められました。

【GRBシステムにより大規模な整地および仮設構台を不要に
杭間3mの飛び杭施工にあたり、本件では「スキップロックアタッチメント」が採用されました。複数のアタッチメントを既設杭上に固定し、連結部をつなぐことで、圧入機やクランプクレーンが杭上を移動することが可能となります。

また、パワーユニットと杭搬送装置の杭上移動を可能とするため、容易に杭頭に取り付けられる作業構台「GRBプラットフォーム」を設置しました。スキップロックアタッチメントとGRBプラットフォームにより、実際の飛び杭施工においても「GRBシステム」による施工を実現し、大規模な整地作業や仮設構台の設置を不要としました。

施工機械ジャイロパイラー F401-G1200、SCU-400M、
クランプクレーン CB4-2、パイルランナー TB8(PR1×2)、
GRBプラットフォーム、スキップロックアタッチメント
材料鋼管杭 杭径1200 杭長31.5~37.0m 施工本数172本

【土砂災害対策でも圧入技術は有用】
日本は土砂災害が頻発する国であり、土石流、地すべり、がけ崩れを合わせると年平均で1,000件以上発生しています。2021年に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害を機に、盛土対策も急を要する課題として注目されるようになりました。土砂災害対策にあたり圧入工法を用いれば、どのような地盤条件であっても地盤に影響を及ぼすことなく、地すべり抑止、砂防堰堤、導流堤などの対策工を急速に推進することができます。

■おわりに

2回にわたってご紹介した施策例のほかにも、バックウォーター対策やダムの建設・再生、遊水池整備、輪中堤、越流堤の構築など、さまざまな流域治水対策で圧入工法は活用可能であり、採用実績は年々増加しています。工法選定や施工検討でお困りの方はお気軽に下記フォームまでお問い合わせください。

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