<事例紹介>
能登半島地震 復興に向けて
~圧入工法による安全かつ急速な復旧工事の実現~
令和6年能登半島地震で被災されました皆様に衷心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
今回のメルマガでは能登半島地震における復旧工事の実績を紹介いたします。今回の実績を活かし、引き続き復興のお役に立てるよう尽力してまいります。
■道路被害の状況について
今年の元旦に発生した令和6年能登半島地震は、能登半島の人々の暮らしに甚大な被害を及ぼしました。その中でも石川県金沢市と能登半島をつなぐ、のと里山海道においては、一般車両が通行できなくなるほどの大きな被害を受けました。
のと里山海道は国土交通省及び石川県の管理する自動車専用道路であり、金沢市と能登半島(全長約90km)を直結しています。夕暮れ時には日本海に沈む美しい夕陽が見られたり、夏の夜には沖合に浮かぶイカ釣り漁船の漁り火が見えたりと、観光客にも非常に人気な道路です。
また、災害発生時には、応急活動(避難、救助、物資供給等)を担う緊急車両が通行するための重要な路線となっています。

のと里山海道の紹介
(引用元:石川県HP_https://www.pref.ishikawa.lg.jp/)
今回の災害により、のと里山海道の徳田大津インターチェンジ以北の区間で、被災箇所は178箇所(内34箇所は盛土の崩落)に上りました。これは、2007年の能登半島地震の3倍以上の数です。並行する一般道の渋滞を招き、被災地への物資の供給や人の搬送を阻む要因となっていました。
大規模崩落が発生したのは、沢地形や高盛土の箇所でした。地震動により盛土が大きく揺さぶられ安定性が失われたこと、また盛土内の過剰間隙水圧が上昇し、せん断抵抗が低下したことが原因として考えられています。


左:のと里山海道(横田IC~徳田大津JCT)、右:のと里山海道(能登大橋)
(引用元:石川県HP_https://www.pref.ishikawa.lg.jp/)
復興へ向けた能登半島への物資の供給、人の搬送、工事用車両の通行を確保するため、のと里山海道の迅速な道路復旧が求められました。
今回当社グループ企業の株式会社技研施工は、のと里山海道沿いの2工区間にて、道路啓開のための車線拡幅工事において土留め壁の構築を行いました。
■「のと里山海道」の道路啓開における車線拡幅工事
本現場は、令和6年能登半島地震により上下2車線だった道路が崩落。1月時点で、現場付近は道路の崩落により下り線のみの片側通行を余儀なくされ、災害応急活動に支障が生じていました。
今回行ったのは、道路を上下2車線で通行できるようにするための工事です。崩壊している盛土の土留めを鋼矢板で行い、山側に道路線形を移して上下線の通行を確保するというものです。

施工中は、下り線の通行を止めることなく、狭い施工ヤードで土留め用の鋼矢板を打設する必要がある他、2024年7月末までに上下線を開通させるために20日間以内に工事を完了させる必要がありました。
現状の交通網を維持したまま施工を行うために、過酷な条件下でも施工できる「GRBシステム™」にて施工。「GRBシステム」は、杭の建て込み・圧入など圧入施工の工程を杭の上で行える施工システムです。構台などの仮設工事が不要となる“仮設レス“施工によって、交通の確保、工期の短縮を実現。機械装置は軽量・コンパクトで、既設杭をしっかりとつかんでいるため、原理上転倒の危険性がありません。

他工法

圧入工法(GRBシステム™)
また、20日間で施工を完了させるため、24時間(3交代)施工を行い、通常機械より硬質地盤での掘削効率を高めた、最新機種「サイレントパイラー™ F112」により工期内施工を実現しました。


■圧入工事概要
施工業者 | 株式会社技研施工 |
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使用機材 | サイレントパイラー™ F112 クランプクレーン™ CB1B パイルランナー™ PR-1 |
杭材型式・寸法 | U形鋼矢板227枚(400㎜幅、長さ9.5~10.5m) |
圧入工工期 | 2024年3月25日~4月18日 |
■能登大橋へ続く啓開道路の補強工事
能登大橋付近は令和6年能登半島地震による崩落等の被害が大きく、7月時点でも「のと里山海道」で唯一、片側交互通行規制が続いていましたが、本道路啓開工事により9月10日から全ての区間で対面通行が可能となりました。
現場は、能登大橋の始点となる橋台付近です。橋台側方の法面が崩れやすくなっており、金沢方面へ向かう上り線は通行に際し再崩落が危惧されていたことから、片側交互通行規制が続いていました。
上り線の通行を可能にするため土留め壁の構築が急務とされる中、施工時には下り線を使った片側交互通行を維持しつづけることも求められました。加えて、現場には転石や障害物が地中に埋まっている可能性がありました。
他工法で片側通行を維持しながら施工を行うには、大型の重機やクレーン、資材等を転倒の危険性がない安定した場所に置く必要があり、法面に作業スペースとして仮設構台を構築しなければなりません。しかし、法面は崩れやすく、また仮設工事には時間と費用がかかります。

施工前の状態

施工断面図
鹿島建設株式会社からの提供データをもとに 株式会社技研製作所作成
本現場では、「ジャイロパイラー™ F401-G1200」と「GRBシステム」により、長さ23.5m、直径800㎜の鋼管杭を34本圧入。延長34mにわたって、鋼管杭の土留め壁を構築しました。
「GRBシステム」は仮設構台が要らず、崩れやすく狭隘なスペースの中でも安全かつスピーディーに施工できます。 また「ジャイロパイラー」なら、振動を抑えながら施工可能。先端に切削爪を付けた鋼管杭を回転圧入していくため、転石をはじめ硬質地盤や既存構造物を貫通しながら、粘り強い構造物を急速構築できます。
発注者である国土交通省や、道路利用者からは「圧入機の搬入から組み立て、圧入までの一連の作業をあの狭いスペースで行えることに驚いた」などの声が上がり、当社技術に対する関心の高さが伺えました。

片側交互通行を維持しながら施工

圧入完了後、9月10日から対面通行が可能に
■圧入工事概要
施工業者 | 株式会社技研施工 |
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使用機材 | ジャイロパイラー™ F401-G1200 クランプクレーン™ CB3-6 |
杭材型式・寸法 | 鋼管杭34本(直径800㎜、長さ23.5m、1箇所継) |
圧入工工期 | 2024年7月16日~8月5日 |
■おわりに
能登半島周辺においては、元旦の地震に加え、9月の豪雨の爪痕もいまだ大きく残っています。
石川県金沢市に設置した能登復興支援室を中心として、引き続き情報収集、提案活動を行い、被災地の復興がより一層加速するように貢献してまいります。
【能登復興支援室 概要】
株式会社技研製作所 能登復興支援室担当
所在地 〒920-0031 石川県金沢市広岡3-1-1 金沢パークビル8F
TEL 076-297-5590
E-MAIL imp-noto@giken.com
【メールマガジンに関するお問合せ先】
株式会社技研製作所 メールマガジン担当
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