GIKEN圧入技術マガジンvol.18

2024.6.4 メールマガジン

このたびの令和6年能登半島地震で被災されました皆様に衷心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
今回のメルマガでは災害復旧案を紹介します。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

 <事例紹介> 

圧入工法による漁港施設の復旧
スピーディーな施工でいち早い能登の漁業再興を


■今回のテーマは「港湾施設の復旧」

能登半島地震は、揺れや海底地盤の隆起・津波などにより、多大な被害をもたらしました。特に港湾施設では、水深が浅くなったことで船が港から出られなくなったり、津波で堤防が消失したりと、甚大な被害が発生しています。そこで今回のメルマガでは、迅速な対応が可能な応急復旧案から、将来的に発生しうる大規模な災害にも耐えられる本復旧案まで、弊社のサイレントパイラーやジャイロパイラーを用いた圧入工法による多様なソリューションを紹介します。なお、前回の記事では道路分野を中心に復旧事例を紹介しておりますので、お時間がございましたらそちらもぜひご覧ください。

約4mの隆起が確認された岸壁(石川県輪島市 鹿磯漁港)1)

■被災した港の再生に向けて

地震の甚大な影響を受けたことによる港機能の停止。それが地域経済に与える影響は計り知れません。特に、漁業を中心とした産業において、港は生命線とも言える存在です。ここで最も重要となるのが、安全な航路の再確保です。航路が機能しなければ、そもそも漁船が出港することができず、漁業も停止したままです。以下の写真のように隆起が生じたことで出入港できなくなった漁港を例に、圧入技術を駆使した迅速な復旧、さらには、港湾機能の強化まで含めた提案をご紹介します。

被災により沖へと移動した海岸線(石川県輪島市 大沢漁港)1)

■既存の港を再利用する”掘削案”

港を再生する方法としては、まず「掘削案」が挙げられます。砂が溜まっている軟らかい地盤に対して有効な方法で、後退した海岸線から既存岸壁まで水路を設け、港を再度活用可能にする手法です。具体的には、岸壁から沖合に向けて鋼管杭や鋼矢板を2列平行に圧入し、その間の水路部分にある土砂を掘削することで、既存の港から海に向けた航路を確保します。

既存岸壁から沖合に向けて水路を構築1)

◯場所を選ばない圧入工法
圧入工法は、部材の搬送・建て込み・圧入という一連の工程を施工済みの部材の上で行うため、傾斜地や不整地、軟弱地盤、水上などの施工においても、仮桟橋などの大規模な仮設工事を必要としません。図のように、2列を機械2台で同時に施工すればさらなる工期短縮も可能です。このように、圧入工法は施工場所を選ばず、かつ迅速な構築能力を有しているため、緊急時の復旧作業においても有効な選択肢であると考えられます。

水上施工においても仮桟橋は不要1)

■新たな港湾施設を構築する“前出し案“

海底に捨石や消波ブロックなどの障害物がある場合や、周辺に岩盤などの硬い層が分布している場合は、増深のための掘削が難しくなります。そこで打開策となるのが、海上に堤防や係船岸を新設することによる、港の「前出し案」です。圧入工法の一つであるジャイロプレス工法であれば、鋼管杭の先端に取り付けられた切削用の爪(ビット)により、硬い地盤や既設のコンクリート構造物を削孔しながら杭を貫入できるため、どのような地盤でも外郭施設や係留施設の新設が可能です。
ここでは、各復旧段階で必要となる作業を、具体例を挙げながら紹介します。

◯応急復旧(復旧度10%)
まずは、漁業が早期に再開できるように、漁港として最低限必要な機能を復旧します。静穏な泊地と船が停泊できる場所を確保するため、隆起した岩礁から海上に向けて鋼管杭を使った簡易的な堤防を整備します。潮の干満の影響を受けない陸上部分にはコンクリート工で堤防兼通路を作り、海上部分の通路には浮桟橋を利用します。

◯仮復旧(復旧度60%)
次のステップでは、限られた期間の中で可能な限りの機能回復を目指します。隆起した浅瀬に係船岸や斜路付き船揚げ場を建設し、人の乗降や貨物の積み下ろし場所、陸上における船の保管場所を確保します。また、旧漁港内部を埋め立てることで復旧工事の作業ヤードを用意し、河口の開削や矢板式護岸の構築により河川水路の整備も行います。

◯全復旧(復旧度100%)+α
最終段階では、元々あった機能を全て復旧させるとともに、更なる機能の充実を図ります。堤防を拡幅して係船岸を増設し、より多くの船舶が利用できるようにします。また、必要に応じて大規模な波浪災害にも対応できるよう、鋼矢板や鋼管杭を用いた堤防施設を増築します。

このように、鋼矢板や鋼管杭を用いた圧入工法は、応急復旧などの仮設工事だけでなく、堤防施設を含む本設工事にも利用できるため、長期的な港湾復旧計画においても有効です。

■次の災害に備える、防災機能の“強化案”

圧入工法を用いれば、原形復旧にとどまらず、防災機能をさらに強化することが可能です。次の地震や津波、高潮などの自然災害から港を守るためには、被災した堤防や岸壁の近くに、速やかに強靭な構造体を築くことが求められます。

◯インプラント構造の優位性
圧入工法で構築するインプラント構造には、従来のフーチング構造にはない優位性があります。フーチング構造はコンクリート基礎の面積を広くして地盤に置くタイプですが、下方向から水が流入しやすく、地盤が洗掘されて支持力が不足し、滑動や転倒が起こりやすい欠点があります。一方、インプラント構造は部材が地盤に深く根入れされており、津波や液状化による外力に対しても粘り強く耐えることができます。

フーチング構造

インプラント構造

◯震災にも耐えたインプラント構造
以下の写真は、東日本大震災で被災した地域のものです。写真左奥には鋼矢板の二重締切工が見えます。手前のコンクリートの堤防はほとんど残っていませんが、高靭性の杭や矢板を地中深くに根入れしたインプラント構造の締切工は、地震動と津波に耐え、ほぼ無傷で残っていました。この実例は、インプラント構造の優れた耐久性を示すものとなりました 

根こそぎ流されたコンクリートの堤防(手前)と無傷で残った鋼矢板の二重締切工(左奥)

仮設構造物でありながら地震動と津波に耐えた二重締切工

表層の中詰土は流失したが躯体はほぼ無傷

◯復旧と防災を同時に
先日の地震では津波によりケーソンの一部が倒壊・水没する事例も発生しました。復旧方法として、元々あった堤防に近接して鋼管杭柱列式堤防や鋼管杭岸壁を構築することも有効です。ジャイロプレス工法を用いれば、コンクリート構造物や岩礁なども削孔できるため、消失した堤防のすぐそばに、津波や液状化に対して粘り強く耐えられる新しい堤防を構築することが可能です。また、天端に上部コンクリートを設置して通路やエプロンを作る場合、鋼管杭は鉛直荷重を考慮して支持力を加味した設計を行います。支持層が深い位置にある場合は、鋼管杭を部分的に長くし、支持層まで根入れする「くし形構造」を採用することで、経済的に沈下対策を講じることが可能です。

津波による浸水被害を受けた漁港(石川県珠洲市 飯田港)1)

岩礁等も削孔できるため場所を問わず堤防の新設が可能1)

くし形構造のイメージ

出典:1)「令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/20240101_noto_earthquake.html)をもとに㈱技研製作所作成

■おわりに

先日の地震では、道路、河川、港湾、漁港など多くのインフラ施設で甚大な被害が発生しており、復旧・復興までに相当な期間を要する見込みです。そこで弊社およびグループ企業である技研施工は、被災地の一日も早い復旧・復興を支援するため、石川県金沢市に臨時事務所を開設しております。本事務所の開設により、現地の状況をリアルタイムに把握するとともに、地域のニーズに合った工法技術提案を行い、経済活動の早期再開、安心安全に暮らせる街への復旧・復興に貢献してまいります。圧入工法に関するご相談・ご関心のある方はぜひ下記の連絡先までご連絡ください。

【能登復興支援室 概要】
株式会社技研製作所 能登復興支援室担当
所在地 920-0031 石川県金沢市広岡3-1-1 金沢パークビル8F
TEL    076-297-5590
E-MAIL imp-noto@giken.com

【メールマガジンに関するお問合せ先】
株式会社技研製作所 メールマガジン担当
所在地  東京都江東区有明3丁目7番18号 有明セントラルタワー16階(東京本社)
TEL    03-3528-1633
E-MAIL press-in_mag@giken.com