GIKEN圧入技術マガジンvol.13

2023.3.31 メールマガジン

 <好条件化機器・事例紹介> 

超硬質地盤における鋼矢板圧入を実現!
貫入不能層や岩盤層・玉石層への施工実績を紹介


今回のテーマは、超硬質地盤における鋼矢板圧入実績の紹介です。オーガ掘削と圧入を連動させることでN50以上の硬質地盤に対する鋼矢板圧入を実現した硬質地盤クリア工法(積算資料1の適用範囲:N600以下)ですが、新たに開発したパイルオーガ「フライホイール式パイルオーガ」を用いればN600以上の超硬質地盤や岩盤層・玉石層でも、確実かつ急速に施工できます。本技術は、3月に国土交通省が運用するNETISに登録されました。

※1 「令和4年度版 国土交通省土木工事積算基準」 (国土交通省大臣官房技術調査課、2022)
  「硬質地盤クリア工法 鋼矢板圧入標準積算資料」(一般社団法人全国圧入協会、2022)

■硬質地盤クリア工法とは

パイルオーガを装着した圧入機を用いて圧入とオーガ掘削を連動させることにより、硬質地盤に鋼矢板を圧入する工法です。

本工法は1台の機械で地盤掘削と鋼矢板圧入の両方を行うことができ、他工法で必要となる地盤を砂に置き換える作業が不要なため、極めて効率の良い施工が可能です。また、先行掘削は打設済みの鋼矢板の継手部をガイドとして行うため高精度に行えます。さらに、掘削範囲を最小限に抑えることができるため、排土量は少なく、周辺地盤への影響を抑えながら鋼矢板壁を構築できます。

■新型オーガ「フライホイール式パイルオーガ」とは

新型オーガは、車のエンジンにも使われている「フライホイール」機構を採用しており、重りによる回転慣性力を利用して回転運動を安定させました。これにより、超硬質地盤を掘削する場合でもオーガ回転速度の急激な低下を防ぎ、安定したオーガ回転を実現しました。また、トルクの伝達効率を上げるため、オーガの各部の強度を従来よりも高め、耐摩耗性や耐荷重性を向上させた新しいビット(切削爪)を採用しています。

■新型オーガによる施工効率化と適用地盤の拡大

N値600以上の超硬質地盤の場合、硬質地盤クリア工法以外の工法では、掘削機で地盤を掘削した後、砂置換を行ってはじめて杭打機による打設の工程に入ることが一般的です。しかし、地盤掘削と鋼矢板打設を1台の機械で行うことができないため、工程数が多く工期が長期化し、それに伴い工事費もかさむという問題がありました。

一方、従来型オーガによる硬質地盤クリア工法は、超硬質地盤においても1台の機械で地盤掘削と鋼矢板圧入を同時に行うことができ、砂置換工程も不要です。しかし、特に最大N600以上の地盤や岩盤層・玉石層の場合は、掘削中にオーガの回転トルクが低下して施工効率が落ち、工事を中断せざるを得ない現場もありました。

新型オーガを使用すれば、超硬質地盤を掘削する場合でも回転トルクの低下を抑制し、高回転トルクでの安定した掘削を実現できます。これにより、施工効率化による工期短縮だけでなく、適用地盤の拡大にも貢献しています。

■実証試験~岩盤層への圧入;従来型オーガよりも深く・速く掘削可能~

地盤条件岩盤層(砂岩、一軸圧縮強度24~35N/mm2)
 概要新型オーガの掘削性能を評価するため、岩盤層での実証試験を行いました。結果、従来型オーガでは深さ10mを超えるとビットの摩耗により掘削できなくなったのに対し、新型オーガではビットを交換することなく14m以上掘削することができました。さらには掘削時間も短縮されており、従来型オーガよりも深く、速く掘削することが可能です。

➤従来型オーガ(
・圧入力:250kN
・回転トルク:30kNm
ビットの摩耗により最長10mで掘削停止

➤新型オーガ(
・圧入力:300kN
・回転トルク:40kNm
ビットを交換せずに平均37.4分で掘削完了

※従来型、新型ともに3回ずつ試験施工を行いました。

■施工実績①~貫入不能層への圧入~

材料U形鋼矢板Ⅳ型、矢板長10.5m
地盤条件玉石混じり砂礫層
概要貫入不能層にU形鋼矢板を圧入した実績です。従来型オーガでは玉石に当り先行掘削に最大12時間を要したため、新型オーガに変更しました。結果、1日当りの施工枚数は従来型オーガと比べて6倍になりました。また、本現場では「PPTシステム」による自動運転も検証し、手動運転と比較して掘削時間が15%短縮できたことも確認されました。

■施工実績②~ハット形鋼矢板にも対応~

材料ハット形鋼矢板25H型、矢板長13.0m
地盤条件玉石混じり砂礫層(最大N値1500、最大径250mm)
概要最大N値1500の玉石混じり砂礫層に対してハット形鋼矢板を圧入した実績です。当初は従来型オーガを使用していましたが、最大N値1500の層に当り貫入不能に陥ったため、新型オーガに変更しました。結果、設計通りの深さまで貫入でき、1日当りの施工枚数を4.2枚とすることができました。

■施工実績③~玉石層への圧入~

材料U形鋼矢板Ⅳ型、矢板長12.5m
地盤条件玉石層(最大N値300、最大径700mmの玉石あり)
概要最大N値は300であるものの、径700mmクラスの玉石を多く混入する地盤での実績です。従来型オーガでは施工に想定以上の時間がかかったため、新型オーガに変更しました。結果、従来型オーガに比べ、深度1m当りの圧入時間は44%短縮でき、1日当りの施工枚数は2倍に増やすことができました。
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■新技術情報提供システム「NETIS」に登録

硬質地盤における鋼矢板打設の可能性を広げた本技術は、国土交通省が運用する新技術情報提供システム「NETIS」に登録されました。本技術を提案し工事で活用すると工事成績評定への加点対象となるため、本工法の普及促進が期待できます。

NETIS登録番号KT-220224-A
技術名称硬質地盤クリア工法(フライホイール式パイルオーガ)
登録日2023年3月1日
対応機種サイレントパイラー F111  U形鋼矢板(400mm幅)
サイレントパイラー F201A  U形鋼矢板(500mm幅、600mm幅)
サイレントパイラー F301  ハット形鋼矢板(900mm幅)

※2023年3月現在