GIKEN圧入技術マガジンvol.11

2022.11.30 メールマガジン

 <現地調査> 

港湾・漁港災害対策における
「インプラント岸壁」の優位性
令和4年度 福島県沖地震の現地調査


今回のテーマは、3月に発生した「令和4年度福島県沖地震」の被災地の現地調査です。当社は震災直後、福島、宮城両県の被害状況を調査しました。その結果、港湾・漁港において、「インプラント構造®」のインプラント岸壁※1は、重力式の岸壁※2と比べて被害が少ない傾向にあったことが分かりました。今回の調査により、インプラント構造の粘り強さがあらためて証明されました。

※1 鋼矢板や鋼管杭などを地中に連続して打ち込み構築される岸壁です。地球にしっかりと支えてもらう構造物は、地震動による液状化・地盤沈下・側方流動や津波などの外力に粘り強く耐え、岸壁機能を維持します。
※2 ケーソン・セルラーブロック・L型ブロックなどを基礎捨石の上に設置し、その重量によって安定性を保つ岸壁形式です。

■福島、宮城両県を中心に港湾、漁港の岸壁に被害

地震による被災岸壁例

被害を受けた岸壁(重力式)

地震は2022316日に発生。マグニチュードは7.4、宮城県の登米市・蔵王町、福島県の国見町・相馬市・南相馬市の合計5つの市町村で最大震度6強を観測しました。地震により、福島、宮城両県を中心に多くの港湾・漁港で重量式岸壁に前傾等の被害が出ました。
被害の主な原因として考えられるのは、地震による基礎捨石マウンドの沈下や変形に伴う重力式岸壁の前傾です。重力式岸壁が海側に水平変位・傾斜することによって、背後地盤のひび割れや陥没も発生していました。

■インプラント岸壁は被害なし

一方、インプラント岸壁では重力式岸壁で見られたような被害は確認されず、健全な状態で残っていました。地中深く打ち込まれ、地球に支えられた杭壁が地震動に耐えて地盤変位を抑え、沈下や傾斜を防いだためと考えられます。

■実際の被災状況(2022年3月23~26日時点)

以下は、地震後の岸壁の状態です。写真をご覧いただくと、重量式構造物の脆弱性、インプラント構造物の粘り強さがお分かりいただけます。

宮城県内の漁港

福島県内の漁港

■粘り強いインプラント構造による耐震補強・機能強化

インプラント構造は、躯体部と基礎部が一体となった許容構造部材を地盤に挿し込み、地球にしっかりと支えてもらう構造です。
「許容構造部材の大きさ」と「地盤の貫入深さ」で水平荷重や鉛直荷重を受け止める構造で、許容構造部材の一本一本が地球に支えられ高い耐久力を発揮します。インプラント構造物は、地震動による地盤変位や津波などの外力に対して崩壊せずにその場に耐え留まり、粘り強い防災インフラとして機能します。

■圧入技術で構築したインプラント岸壁も無傷

現地調査では、過去に圧入技術で構築したインプラント岸壁の状況も確認しました。いずれも地震等に対して粘り強く耐え、健全であることが確認できました。

【石巻漁港】
 以下は、2017年に鋼管杭回転切削圧入工法「ジャイロプレス工法®」でインプラント岸壁を構築した現場です。前傾、亀裂とも一切生じていないことがお分かりいただけます。
工事概要や現場写真、土質柱状図はこちら

ジャイロプレス工法で構築した鋼管杭による岸壁

震災後、無傷で残ったインプラント岸壁

【渡波漁港】
以下は、2013年に硬質地盤クリア工法でインプラント岸壁を構築した現場です。こちらも先ほどと同様に震災に粘り強く耐え、無傷で残っていることがお分かりいただけます。
工事概要や現場写真、土質柱状図はこちら

硬質地盤クリア工法で構築したインプラント岸壁

震災後、無傷で残ったインプラント岸壁

■公共インフラの防災対策強化の必要性

道路・漁港施設などの公共インフラは高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が目立ち始めています。豪雨災害は激甚化・頻発化しているうえ、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模地震発生の切迫性が指摘されており、インフラの機能強化は急務となっています。

こうした中、岸壁の物揚場の耐震化・耐津波といった防災対策の強化は案件として多く出てきています。ご紹介してきた通り、重力式構造物に対するインプラント構造物の優位性は明らかです。今後も人びとの命や財産、文化を守る粘り強いインフラを構築すべく、インプラント構造の提案活動を展開していきます。