GIKEN圧入技術マガジンvol.08

2022.2.18 メールマガジン

 <当社の提唱> 

サステナブルな建設の実現へ
「機能構造物」の構築推進を
部材の将来的な移設、撤去、再利用を想定。SDGsにも貢献


■圧入技術はSDGsに貢献

杭圧入引抜機「サイレントパイラー」は、杭上を自走する機構により「仮設レス施工」が可能です。従来工法で必要となる機械や資材を置くための仮設工事が不要なため、大幅なCO2削減が実現できます。加えて、圧入機で構築したインプラント構造のインフラは、地震や津波、洪水にも粘り強く耐えるため、強靭で持続可能なまちづくりに貢献します。また圧入システムの電動化・自動化により、脱炭素化や労働力不足解消、生産性向上に寄与します。

河川堤防を決壊から守る「インプラントロック堤防」

GRB®システムによる「仮設レス施工」

地下の可視化、自動運転を実現するPPTシステム®、脱炭素化に貢献する電動のサイレントパイラー

上記の圧入技術の優位性は、SDGsの
9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
・11「住み続けられるまちづくりを」
・13「気候変動に具体的な対策を」
に貢献します。

これらに加え、サイレントパイラーが実現する「機能構造物」は、SDGsの12「つくる責任つかう責任」にも資します。
今回は、当社が提唱し続けているこの「機能構造物」を詳しく解説します。

■従来の構造物のほとんどは「永久構造物」

 まずは以下の動画をご覧ください。

【永久構造物は多くが使用期間を超えるも移設・撤去が困難】

高度経済成長期の建設ラッシュ時に建設された構造物は50年の使用期間を想定していました。しかし現在、多くの構造物がその使用期限を迎え、老朽化や更新が課題となっています。

土木構造物では従来、仮設構造物に対して、本設として長期使用する構造物を「永久構造物」と呼んでいました。この名称が示すように、建設当時は構造物が長期使用できることに着目するばかりで、造ることに忙しく、使用期間が過ぎた後のことは遠い未来の出来事としてあまり考慮されてはこなかったようです。しかし現在、撤去が難しい構造をしていることや、都市化による建設物の過密化により工事が非常に難しくなっているという事態が起こっています。

永久構造物の例:「フーチング構造」の擁壁

【未来にツケを回す永久構造物】

例えば、上図のような「フーチング構造」の擁壁の場合、フーチングは横に広い構造となり、その上部は道路など様々な用途で使用されることになります。 

仮に道路拡幅のためにこの擁壁を撤去する必要が生じた場合、背面の土が崩れないように仮設の土留め壁を構築した上で、前面の道路を仮に移設した後、地盤を掘削して擁壁を取り壊して撤去する必要があります。作業には膨大な時間と広大な作業スペースが必要となりますが、建物の密集した都市部ではスペースの確保が難しいケースが少なくありません。 

また、こうした「永久構造物」は、そのニーズがあるうちは地域を支えるインフラとして機能しますが、ニーズは時代と共に変化するため、不要になった時代に生活する次の世代にとっては、邪魔者以外の何物でもありません。そういう面からも「永久構造物」という言葉は、実状にも即していない言葉であるといえます。

■機能構造物

【移設・撤去が容易。部材の再利用も】

一方、当社が提唱する「機能構造物」という概念は、構造物の機能に着目し、必要とされる機能が時代や社会の変化に応じて変わって行くことを前提にして、そのニーズに応じて柔軟に対応することができる「機能重視」の構造物でなければならないという考えです。そのためには、構造物はその撤去や移設が簡便で、撤去した部材はニーズに応じた構造物に再利用することができる必要があります。

【圧入技術で建設するインプラント構造物は「機能構造物」】

当社の圧入技術で建設するインプラント構造物はこの「機能構造物」であり、サイレントパイラーで容易に撤去、再構築が可能です。インプラント工法®は、工場生産された杭/矢板を地上部から地中に圧入するだけで強靭なインプラント構造物を急速に構築します。 

先の道路擁壁を例にとると、コンクリート構造物では設置時や移設・撤去時、フーチング面積に応じた仮設土留め工の設置や道路や背面構造物の移設などに多くの工種と工程、広いスペースを要しましたが、インプラント構造物はコンパクトなサイレントパイラーの作業スペースが確保できれば設置ができます。また、撤去・移設の際もサイレントパイラーで杭/矢板の引き抜きが行えます。

機能構造物

時代の変化や文化の発展に伴い、柔軟に機能変化に対応し、限りある資源の有効利用も可能とする。未来にツケを回さない、サステナブルな建設を実現する構造物こそが、当社が提唱を続けている「機能構造物」です。

■動画で比較

下の動画は、従来のコンクリートによる逆T型擁壁とインプラント工法による擁壁の施工手順の違いを紹介したものです。こちらをご覧いただければ、インプラント工法の施工のシンプルさ、またインプラント構造物の解体、撤去の容易さについてイメージしていただけます。

※許容構造部材とは「工場生産された杭材」のことです

■機能構造物の例

【機能構造物の理念を実現する「インプラントハット橋梁」】

ここからは当社が開発した「インプラントハット橋梁」を例に、機能構造物のメリットについて説明します。

インプラントハット橋梁とは、地盤と一体化させたインプラント構造の笠付き鋼管杭(インプラントハット杭)を橋脚として利用し、その上に梁を介して大型覆工板(橋桁)を設置することで構築する橋梁です。

建設に必要な資機材をすべて橋梁の上に載せて作業できることから、省スペースかつ短期間で架設できます。また建設時と逆の工程をたどることで移設や撤去も容易に行うことができます。引き抜いた部材は別の現場に転用することができます。インプラントハット橋梁は、サステナブルな建設に資する次世代のスマートな橋梁です。