<技術紹介>
仮設工事を不要とする「GRBシステムⓇ」
都市河川の護岸工を例に工期短縮効果を紹介
~後工程における活用事例も紹介~
■GRBシステム
今回は、圧入技術の優位性を大きく発揮できる技研グループの「GRBシステム」について少し掘り下げます。
GRBシステムは、すべての機械装置を既設杭上で稼働させることで、仮設桟橋や仮設道路など一切の仮設工事を不要とする“仮設レス施工”を実現するシステムです。杭の搬送、建て込み、圧入などの全工程を杭上で完結させることができます。GRBシステムによる施工法を「ノンステージング工法」と呼んでいます。

GRBシステムの基本構成は、杭を地中に押し込む圧入機本体を先頭に、油圧動力源のパワーユニット、パワーユニットを移動させるユニットランナーⓇ、杭を建て込むクランプクレーン、作業基地から杭を搬送するパイルランナーⓇで構成されます。すべての機械装置は既設杭をしっかりとつかんで自立しているため、原理上転倒の恐れがありません。
■多様な条件下で本体工事だけを効率的に実施
ノンステージング工法ではクレーンを含む全機械装置が施工済みの杭上を自走しながら次の杭を圧入していきます。そのため、水上、傾斜地、不整地、狭隘地、低空頭地でも、仮設桟橋や仮設道路など一切の仮設工事を不要とし、本来の目的である本体工事だけを効率的に行えます。

水上

傾斜地

空頭制限下

狭隘地
■従来工法との比較 -都市河川の護岸工事を例に工期短縮効果を説明-
ノンステージング工法の工期短縮効果について、狭隘な都市河川の護岸工事を例に、仮設構台を用いた従来工法「中掘工法」と比較しながらご説明します。

ノンステージング工法

中掘工法
【比較条件】(施工延長100m)
使用杭材:鋼管矢板φ900㎜、t=10㎜、L=12m
地盤条件:砂質土、N=20
護岸工 :前面に化粧板設置
使用機械:
【ノンステージング工法】サイレントパイラー®(鋼管矢板用、GRBシステム)
【従来工法】アースオーガー中掘機、クローラクレーン50~55t吊
仮設工:(仮設橋)
【ノンステージング工法】なし
【中掘工法】面積=10m×100m、杭材H-300×300、杭長L=15m
◎ノンステージング工法は仮設工事が不要
中掘工法では、杭の中空部を掘削する中掘機とクレーンを置くスペースを確保するため、施工箇所全長にわたって仮桟橋を設置する必要があります。
一方、ノンステージング工法は杭施工の全工程を既設杭上で完結できるため、工事の発進基地のほかは、施工箇所全長にわたって機械幅さえ確保できれば施工できます。
◎ノンステージング工法は工期を36%短縮
ノンステージング工法は“仮設レス施工”と高い施工効率により、仮設橋工が必要な中掘工法に比べて工期を36%短縮できます。工程の短縮により間接工事費が削減できます。

■後工程での活用事例をご紹介
GRBシステムは杭施工だけでなく、後工程においても“仮設レス施工”を可能とします。
下の写真は鋼管杭で護岸を築いた後、パイルランナーとクランプクレーンを用いて護岸ブロックを設置している風景です。クランプクレーン、パイルランナーは圧入後の後工程でも活用できます。

護岸ブロックを吊り上げるクランプクレーン

護岸ブロックを運搬するパイルランナー

設置が完了した護岸ブロック
■災害が発生した危険な現場でも活躍
GRBシステムを用いれば、他工法では二次災害の恐れがある危険な災害現場においても、“仮設レス施工”でスピーディーな復旧工事を実現します。
ここでは鹿児島県鹿屋市の土砂崩れ現場における橋台補強事例をご紹介します。

施工前
本工事では、崩壊斜面の橋台を補強するため周囲に鋼管を圧入しました。従来工法では、重機やクレーンを載せる仮設構台を構築する必要がありました。また、打撃や振動で施工する杭打ち機では不安定な地盤に影響し、二次災害を引き起こす恐れがありました。

GRBシステムを用いて施工中
GRBシステムならば、地中深く根入れした安定した杭の上で“仮設レス施工”を行うことにより、仮設構台を構築することなくスピーディーに施工できます。また、ラジコンによるリモート施工により、予期せぬ事故を避けて安全に工事することができます。加えて、圧入機は無振動・無騒音のため、不安定な地盤を乱すことなく施工することができます。
なお本現場では橋台下の空頭制限下での施工が求められたため、低空頭対応の杭圧入引抜機「クリアパイラーⓇ」を使用。上部構造物を撤去することなく施工を完了しました。

施工後