GIKEN圧入技術マガジンvol.03

2021.7.29 メールマガジン

 <製品・工法紹介>

長寿命化、国土強靭化で採用拡大
低空頭専用・対応機と適用事例を紹介


■構造物の長寿命化、国土強靭化で採用広がる
今回ご紹介するのは、低空頭専用の杭圧入引抜機「クリアパイラー」と低空頭対応の鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー」、それらの適用事例についてです。

※橋梁のけた下や電線の下など頭上空間に制限があることを空頭制限といいます。低空頭専用・対応の圧入機を用いる「上部障害クリア工法」により、空頭制限下でも圧入施工が可能になります。

■クリアパイラーの現場を動画でご紹介
まずはクリアパイラーを用いた施工現場の動画(武蔵水路改良工事)をご覧ください。

高度経済成長期に大量に整備されたインフラ構造物は老朽化が進んでおり、対策が急務となっています。構造物の長寿命化や国土強靭化が進められる中、低空頭専用・対応機は橋梁の耐震補強や橋の下における河川護岸改修などの空頭制限下で採用が広がっています。

■従来工法は振動、硬質地盤への対応が課題
空頭制限下の代表的な現場には橋梁下があります。既設橋脚の耐震補強を例に挙げますと、通常、橋脚の周りに仮締切り(土留め壁や止水壁)を築いた上で掘削や水抜きをして補強工事を施します。鋼矢板や鋼管矢板などの杭材はこの仮締切りの構築に用いられます。

クリアパイラーで構築中の鋼矢板の仮締切り

空頭制限下で仮締切りを構築する工法は他にもあります。しかし、施工時の振動が既設の橋脚や橋台、周辺構造物に及ぼす影響や硬質地盤への対応が課題となっています。

低空頭専用の杭圧入引抜機「クリアパイラー」
クリアパイラーは、徹底的に機械寸法を圧縮した低空頭専用の杭圧入引抜機で、鋼矢板や鋼管矢板に対応しています。機械と一体となった吊り込み装置を使うことで杭の建て込みに必要な空間を圧縮。また、継施工で一度に建て込める杭を長くできるよう、杭把持部の「チャック」を低空頭仕様にしています。

■クリアパイラーは無振動、無騒音。一定の硬質地盤にも対応
他工法と異なり、クリアパイラーは無振動、無騒音施工が可能なため周辺構造物に影響を及ぼすことはありません。またウォータージェット併用圧入が可能なことから、N50程度の比較的硬質な地盤に対しても鋼矢板や鋼管矢板を圧入できます。
※地盤の強度を示す値のこと

■硬質地盤には低空頭対応の鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー」

空頭制限下でN値が50を超えると鋼矢板、鋼管矢板の圧入が難しくなってきます。そうした硬質地盤に対しては、低空頭対応のジャイロパイラーを用いることで鋼管杭を圧入できます。ジャイロパイラーは、先端に切削爪を付けた鋼管杭を回転圧入する「ジャイロプレス工法」対応機で、硬質地盤、さらにはコンクリートなどの地中障害物を打ち抜きます。

現在、低空頭対応のジャイロパイラーは2機種あり、「GRAL1015」は直径8001000㎜、「GRAL1520」は12001500㎜の鋼管杭に対応しています。

GRAL1520

■小口径鋼管による止水 ―ジャイロプレス工法で仮締切り構築―
鋼管杭で地盤を締切る際、鋼管杭には杭と杭を結合する継手がないため、大口径の杭間にすき間を埋める小口径鋼管を圧入します。小口径鋼管は専用アタッチメントを装着することで圧入できます。ジャイロプレス工法ならば、ジャイロパイラー1台で大口径、小口径ともに硬質地盤に直接貫入可能。施工精度の高さから杭と杭を密着できる点も特長です。

鋼管矢板の標準断面図

鋼管矢板の継手形状

小口径鋼管を用いた止水壁の断面図

小口径鋼管を用いた止水壁

■「井筒基礎」の構築でも採用が拡大
鋼管矢板対応のクリアパイラー、低空頭対応のジャイロパイラーを使えば、空頭制限下においても仮締切兼用基礎杭を構築することができます。

例えば、近年では「井筒基礎」への適用が広がっています。井筒基礎とは、地中深く設置した鋼管矢板や鋼管杭で地盤を囲って締切り、その中にコンクリートを充填して構築する基礎構造物です。大きな支持力が得られる工法として、橋脚の新設、耐震補強工事などで広く適用されています。

 ■ジャイロプレス工法ならば硬質地盤でも井筒基礎を構築可能
ジャイロプレス工法を用いれば鋼管矢板を貫入できない硬質地盤においても井筒基礎を構築可能です。

鋼管杭による井筒基礎は、杭貫入時の抵抗となる継手が存在しないことから施工性に優れる点が特長です。また、鋼管矢板による井筒基礎は、継手間相互をモルタル充填により固めた構造であり、継手の曲げ剛性を考慮した設計を行います。それに対し、鋼管杭による「継手レス井筒基礎」は継手が結合していないため、継手の剛性を考慮しないでモデル化し、弾性床上の梁として立体骨組み解析が行われることが多いです。

硬質地盤条件下での井筒基礎の問合せは年々増加しており、今後も採用拡大が期待されています。

低空頭対応のジャイロパイラーで構築した井筒基礎

■各クリアパイラー、ジャイロパイラーの基本性能一覧

クリアパイラー

機種CL70BCLW100CLP200A
適用杭材U形鋼矢板400㎜
Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ型
U形鋼矢板500㎜ VL,ⅥL
U形鋼矢板600㎜ Ⅲw,Ⅳw
鋼管矢板Φ800~1000㎜
(PP, PT, LT継手)
最小施工可能
クリアランス

ジャイロパイラー

機種GRAL1015GRAL1520
適用杭材鋼管杭Φ800~1000㎜鋼管杭Φ1200~1500㎜
最小施工可能
クリアランス

■上部障害クリア工法の施工実績

上部障害クリア工法の施工実績はこちらからご覧になれます。