GIKEN圧入技術マガジンvol.02

2021.6.29 メールマガジン

 <工法提案> 河川堤防補強

あらゆる破堤要因に耐える「インプラントロック堤防™」
鋼矢板を圧入するだけ。既存堤防の上から急速構築


■決壊に粘り強く耐える堤防整備が急務
今年も豪雨・台風シーズンが到来しました。全国142カ所の堤防が決壊し、100人を超える死者・行方不明者を出した令和元年東日本台風(台風19号)をはじめ、河川堤防の決壊は近年相次いでおり、激甚化する豪雨災害に耐える粘り強い堤防構築が急務となっています。

令和元年東日本台風で決壊した長野市の千曲川堤防

■インプラントロック堤防を動画で解説
今回ご提案する「インプラントロック堤防」は、あらゆる破堤要因に粘り強く耐える河川堤防を構築する工法です。まずはCGや模型を用いてインプラントロック堤防の構造やその優位性などについて解説します。

■河川堤防の決壊要因「土堤原則」
大半の河川堤防は土を盛って固めただけの「土堤」です。土堤は水を含むと脆くなります。河川堤防が越水や浸透、浸食で決壊してしまうのは土堤のこの脆弱性に起因しています。このほか、地震による液状化現象で地盤沈下を起こし、破堤につながる怖れもあります。

土堤の脆弱性を根本的に解決するには、堤防内部にそれ自体が自立したコア構造体を構築して補強するしかありません。しかし現在、河川堤防内に土以外のものを入れることは認められていません。これを「土堤原則」と呼びます。

■現状では全破堤要因への対応困難。粘り強さに懸念も
土堤原則があるため、現状では河川堤防の表面をブロックで覆ったり、のり尻に鋼矢板を打ったりといった効果が限定的な対策しか施すことができません。しかし、こうした工法ではすべての破堤要因への対応は難しいですし、構造物の粘り強さに懸念が残ります。複数工法を組み合わせる選択肢もありますが、膨大な工費と工期が必要となり合理的とは言えません。

■鋼矢板を打ち込むだけで全要因に対応
インプラントロック堤防は、今ある堤防をそのままに、内部に鋼矢板による二重連続壁と隔壁をコアとして急速構築して補強するものです。大規模な工事は不要で、鋼矢板を打ち込むだけで完了します。巨大津波にも耐える自立した壁体は、盛土が越水や浸食で崩れても堤防機能を保ちます。地震時には地盤を囲った壁体が液状化層の流動を抑えて地盤沈下を抑止。あらゆる破堤要因に粘り強く耐えます。

 

海外では鋼矢板を使った河川堤防の補強が広く行われています。もしインプラントロック堤防で補強していれば、千曲川をはじめとした豪雨による河川堤防の決壊は防げたと指摘する識者もいます。

■「緩傾斜堤」との比較
のり面を緩やかにすることで越水破堤や浸透破堤を防ぐ「緩傾斜堤」を構築する場合、大規模な構造体となるため新たな用地が必要となるケースがあります。スーパー堤防はその最たる例です。また既存堤防を撤去することから、工事の間河川を受け止める仮設締切りを造らなければなりません。加えて自重が大きくなるため、堤体の沈下が発生する恐れがあります。

 インプラントロック堤防は、既存の堤防内に鋼矢板を打つだけで構築可能で、新たな用地取得や仮設締切りは要りません。堤防の自重を小さくできるため、沈下の抑制も期待できます。

■スピーディーな施工で最短工期を実現
工事中に自然災害に襲われる可能性があること、また構造体が国民の命と財産を守る使命を持っていることから、工事は一秒でも早く完了することが大切です。「サイレントパイラー®」はコンパクトなため複数パーティーで工事を同時進行できます。加えて、作業用仮設工事を不要とする「GRB®システム」を併用することにより最短工期で完成させることができます。

■施工実績
高知海岸堤防改良工事 仁ノ工区(高知県高知市)/国土交通省直轄事業

高知海岸堤防改良工事の一部区間でインプラントロック堤防が採用されています。
従来、国の直轄工事では堤体(海岸、河川の両方を含む)に鋼矢板を打つことは一切認められていませんでしたが、圧入原理とインプラントロック堤防の優位性が認められ、初めて前例を覆しました。

また、隔壁がないためインプラントロック堤防とは異なりますが、高潮対策や護岸改修で二重鋼矢板による堤防補強が採用された実績はあります。久万川・国分川高潮対策工事(高知市)ではその耐震性能が、山崎川護岸改修工事(名古屋市)では液状化対策効果が評価され、施工されました。

繰り返しになりますが、インプラントロック堤防はあらゆる破堤要因に粘り強く耐える河川堤防を構築する工法です。

当社は国民の命と財産、さらには積み重ねられた文化を守るため、土堤原則の転換とインプラントロック堤防の実現を訴えています。