<事例紹介>
超硬質地盤への施工事例を紹介
~「貫入不能地盤」にも鋼矢板、鋼管杭を圧入~
今回のテーマは硬質地盤へのアプローチです。一般に超硬質地盤に対して杭施工は難しいですが、圧入工法での施工実績は数多く存在します。鋼矢板は硬質地盤対応圧入機「クラッシュパイラーⓇ」による「硬質地盤クリア工法」、鋼管杭は回転切削圧入機「ジャイロパイラーⓇ」による「ジャイロプレス工法Ⓡ」で貫入抵抗の大きい地盤を打抜くことができます。
■硬質地盤クリア工法
硬質地盤クリア工法とは、パイルオーガを装着したクラッシュパイラーにより圧入施工とオーガ掘削を連動させ、硬質地盤に鋼矢板を圧入する工法です。
掘削と杭圧入を1台の機械で行えるうえ、他工法で必要となる地盤を砂に置き換える作業が不要なため、極めて効率の良い施工が可能です。また先行掘削は完成杭の継手部をガイドとして行うため高精度に行えます。掘削は最小限に抑えられるので排土量は少なく、周辺地盤を乱さないため強い支持力を持った完成杭を構築できます。

■施工イメージ
【同時圧入】(砂礫、玉石層など貫入抵抗が比較的小さい地盤)

【先行掘削圧入】(転石、岩盤層など貫入抵抗が大きい地盤)

■工法比較例
■事例①:170 N/mm2の貫入不能岩層への圧入
以下は、一軸圧縮強度170 N/mm2以上の岩層に施工した事例です。本件はグループ会社の技研施工が施工したケースで、橋梁下部工に伴う仮締切を構築するため鋼矢板を圧入しました。

硬質地盤クリア工法の施工風景
工事名 | 益田道路高津川派川橋第一下部工工事 |
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工事場所 | 島根県益田市 |
材料 | 鋼矢板 VL型 矢板長18.0~21.0m 施工延長192m |


土質柱状図
■事例②:153.9N/mm2の貫入不能溶岩層への圧入
最大一軸圧縮強度153.9N/mm2の溶岩層に施工した事例です。本件も技研施工が施工したケースで、土砂災害の被害拡大防止のため鋼矢板で導流堤を構築しました。作業スペースとなる道路の通行止めが許されない中、省スペース・2台同時施工により、道路供用を維持したまま導流堤を急速構築しました。

2台同時施工の施工風景
工事名 | 大金沢応急対策工事(導流工)(緊急施工) |
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工事場所 | 東京都大島町 |
材料 | 鋼矢板 Ⅲ型 矢板長7.0m 施工延長329m |

側面図・横断図

土質柱状図
■「フライホイール式パイルオーガ」で飛躍的に施工能率アップ
昨年販売開始したフライホイール式パイルオーガを使えば、硬質地盤クリア工法の施工能率を大幅に向上できます。モーターの動力を伝える回転軸に重りを組み込むフライホイール機構の採用によって回転運動エネルギーを発生させ、掘削力を増強しました。
■施工実績:従来型に比べ施工時間を大幅短縮
フライホイール式パイルオーガを用いて超硬質地盤に施工した実績を紹介します。施工条件は以下の通りです
使用杭材:Ⅲ型8.0mU形鋼矢板
地盤 :砂岩層(最大推定N値1100)
本現場は日進量5枚の計画でしたが、従来型パイルオーガで施工したところ、1枚目の先行掘削だけで約8時間を要し、2枚目に至っては約12時間かかったため断念しました。
その後、フライホイール式パイルオーガを導入。30枚超を施工した結果、1枚当たりの先行掘削時間は最短で30分、最長で3時間20分、平均約1時間に短縮できました。
掘削時に出てきた岩を一軸圧縮試験したところ95N/mm2という結果が出ました。

■ジャイロプレス工法
ジャイロプレス工法は、鋼管杭の先端にリングビットを付けて回転圧入することで硬質地盤やコンクリートなどの地中障害物を貫通し、粘り強いインプラント構造物を急速構築する工法です。既存構造物を残したまま施工できる特長があります。1台の圧入機で施工可能なうえ、地盤の掘削作業や砂への置き換えが不要なため、工費・工期の縮減が可能です。


■施工事例③:140N/mm2の地盤への圧入
以下では、セルラーブロック、最大一軸圧縮強度140N/mm2の安山岩(CM級)を打ち抜いて鋼管杭による護岸を構築した事例を紹介します。

ジャイロプレス工法の施工風景
工事名 | 平成29年度長崎港(松ヶ枝地区)岸壁(-12m)(改良)外1件工事 |
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工事場所 | 長崎県長崎市 |
材料 | 鋼管杭 杭径1200mm 板厚13mm 杭長16.0m 杭径1500mm 板厚15mm 杭長32.0m |

土質柱状図
■施工事例④:80.1N/mm2の地盤への圧入
以下では、鉄筋コンクリート製の既存防潮堤と最大一軸圧縮強度80.1N/mm2の凝灰岩(CM級)を打ち抜いて鋼管杭による防潮堤を構築した事例を紹介します。

ジャイロプレス工法の施工風景
工事名 | 両石漁港海岸災害復旧工事 |
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工事場所 | 岩手県釜石市 |
材料 | 鋼管杭 杭径1500mm 板厚24mm 杭長21.0~26.0m 1~2箇所継ぎ |

土質柱状図
■作業用仮設工事を不要とする「GRBⓇシステム」にも対応
GRBシステムは、すべての機械装置を既設杭上で稼働させることで、仮設桟橋や仮設道路など一切の仮設工事を不要とする“仮設レス施工”を実現するシステムです。杭の搬送、建て込み、圧入などの全工程を杭上で完結させることができます。
硬質地盤クリア工法、ジャイロプレス工法はこのシステムに対応しています。GRBシステムの詳細については過去のメルマガを参照してください。

GRBシステムの基本構成