GIKEN圧入技術マガジンvol.17

2024.3.7 メールマガジン

 <事例紹介> 

圧入工法による災害復旧事例
山間部で崩落した道路や津波で被災した桟橋式岸壁等を急速復旧


このたびの令和6年能登半島地震で被災されました皆様に衷心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
今回のメルマガでは災害復旧事例を紹介いたします。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

■迅速かつ安全な災害復旧を実現する「圧入工法」

圧入工法は、地中に押し込まれた杭や矢板を数本つかみ、油圧による静荷重で次の部材を押し込んでいく工法です。機械が既設の杭や矢板の上で作業するため、斜面や水上でも仮桟橋などの仮設工事を省略して本体工事を行うことができます。また、地中深く圧入された杭・矢板をしっかりとつかんでいることから転倒の心配がありません。施工条件が厳しい災害復旧工事においても、迅速かつ安全に工事を行うことが可能です。
以降は、この圧入工法のメリットを活かした災害復旧事例を紹介いたします。

■山間部にて崩落した道路の復旧事例

記録的豪雨で崩落した東京都西多摩郡の道路の復旧工事です。河川の増水と洗掘により、片側1車線の道路が約50mにわたって完全に崩落しました。

この道路は奥にある集落へと続く唯一の道でした。そのため、まずは仮桟橋を設置し、1車線を確保する応急復旧が行われました。その後の本復旧工事でも、地域住民の生活への影響を最小限に抑えるため、仮桟橋上での片側交互通行を維持しつつ施工を行うことが求められました。

また、現場は狭隘かつ急斜面で、換算N1500/一軸圧縮強度53N/mm2の岩を含む層があり、この条件下で擁壁が構築できる工法が求められました。

被災後の様子
(提供:佐久間建設㈱)

そこで、狭隘な作業スペースでも交通を妨げずに施工可能で、岩盤層を削孔しながら鋼管杭を圧入可能な「ジャイロプレス工法®」を用いた連続鋼管土留め擁壁案が採用されました。圧入機とその周辺機器は既に貫入された鋼管杭の上で作業するため、圧入機の側方に施工ヤードを必要とせず、山側一車線を既存交通のために開放することができました。圧入機と通過する車両との離隔が50cm以下という非常に狭い現場でしたが、省スペースでも施工可能という圧入工法のメリットを最大限に生かし、崩落した道路を迅速に復旧することができました。

圧入機や杭建込み用のクランプクレーンは杭上を自走可能

山側一車線を開放しながら施工

施工機械ジャイロパイラー(GRAL1015)、クランプクレーン
パイルランナー、サブチャックアタッチメント
材料鋼管杭 杭径800mm 板厚9mm 杭長14.0~17.5m 3~4箇所継ぎ 施工本数28本

■道路沿いの斜面崩壊に対する復旧事例

大雨で発生した土砂崩れで通行止めになった東京都八王子市の道路の復旧事例です。この道路は地域間の連携を支える地域高規格道路であり、迅速な復旧が求められました。
被災後、応急復旧として親杭横矢板を用いた防護柵が設置され、道路上の土砂を撤去したのちに供用が再開されました。本復旧工事では、交通を遮断せずに歩道のスペースのみを利用して工事を行うことが求められました。また、土砂崩れを起こした後の地盤は不安定になっているうえ、斜面の上には複数の建物があるため、後背地の地盤変状を起こさずに安全に擁壁を構築できる工法が必要でした。

被災後の様子
(提供:㈱ダイエーコンサルタンツ)

そこで、狭隘な現場でも杭上での省スペース施工が可能であり、現況地盤に影響を与えることなく擁壁を構築できるジャイロプレス工法が採用されました。他工法では大規模な仮設工事が必要で工期も長くなりますが、杭上施工により仮設工事を不要とし、工期の短縮を実現しました。さらに、他工法では土砂崩れを起こした斜面を掘削して擁壁を構築するため、地すべりを誘発する恐れがありますが、低振動・低騒音で鋼管杭を圧入することにより、二次災害のリスクを最小限にして施工を完了しました。

交通を遮断せずに歩道のスペースのみを利用して施工

完成後の様子

施工機械ジャイロパイラー(F401-G1200)、クランプクレーン
材料鋼管杭 杭径1000mm 板厚10mm 杭長16.8m 1箇所継ぎ 施工本数56本

■桟橋式岸壁の復旧事例

東日本大震災による津波で被災した宮城県塩竈市の桟橋式岸壁の復旧工事です。この桟橋には本島と日本三景の一つである松島を結ぶ遊覧船が着岸します。その利用客は年間30万人以上であり、経済活動の復興のためにも供用しながらの早期復旧が望まれました。
既存桟橋の護岸部にはひび割れ等の損傷が確認され、大型の重機類は設置場所が限定されました。また、現場には捨石が敷かれており、それを貫通可能な杭打ち工法が求められました。

杭同士の間隔を1.2m空けて施工

現場全景
(提供:あおみ建設㈱)

そこで、機械が杭をつかんで自立することでヤードの問題を克服でき、護岸損傷部に与える影響を抑えつつ、捨石も削孔可能なジャイロプレス工法が採用されました。ジャイロプレス工法であれば、先端リングビット付き鋼管杭を回転させながら圧入することで、今回のような捨石だけでなく、鉄筋コンクリートに対しても削孔が可能です。なお、杭間の止水処理も行えるため、止水が必要な岸壁などにも対応できます。

また、本工事ではスキップロックアタッチメントを併用して、2m(杭径の2.5倍)ごとに杭を打つ飛び杭施工を行っています。アタッチメントを併用することで、連続杭だけでなく杭間隔が空く飛び杭の上でも圧入工法のメリットを維持したままで工事が可能となります。

施工機械ジャイロパイラー(F401-G1200)、クランプクレーン
パイルランナー、スキップロックアタッチメント
材料鋼管杭 杭径800mm 板厚9mm 杭長11.0~21.0m 0~1箇所継ぎ 施工本数70本

■おわりに

今回の地震では、道路、河川、港湾、漁港など多くのインフラ施設で甚大な被害が発生しており、復旧・復興までに相当な期間を要する見込みです。そこで弊社およびグループ企業である技研施工は、被災地の一日も早い復旧・復興を支援するため、石川県金沢市に臨時事務所を開設しました。本事務所の開設により、現地の状況をリアルタイムに把握するとともに、地域のニーズに合った工法技術提案を行い、経済活動の早期再開、安心安全に暮らせる街への復旧・復興に貢献してまいります。圧入工法に関するご相談・ご関心のある方はぜひ下記の連絡先までご連絡ください。

【石川県 臨時事務所 概要】
株式会社技研製作所 石川県臨時事務所担当
所在地 920-0031 石川県金沢市広岡3-1-1 金沢パークビル8F
TEL    076-297-5590
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