GIKEN圧入技術マガジンvol.15

2023.8.4 メールマガジン

 <事例紹介> 

圧入工法による「流域治水」施策を紹介!
河道掘削に伴う護岸整備、河川堤防の補強、施設の浸水対策


今回のテーマは、圧入工法を用いた流域治水施策の紹介です。
水害から国民の命や財産を守る、画期的なソリューションを提供します。

■「流域治水」の様々な施策に適用可能な圧入工法

流域治水とは、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される地域)までを一つの流域として、流域に関わる者すべてで水害対策に取り組むという考え方です。近年、大雨による自然災害は頻発化・激甚化しており、河川流域全体で水災害対策を行う必要性が叫ばれています。

流域治水においては、氾濫をできるだけ防ぐ構造や、被害があった際にも早期復旧・復興が可能な工法が求められます。圧入工法であれば、高い靭性を誇る鋼材を地盤へ貫入し躯体部と基礎部を一体化させることで、水害に粘り強く耐える構造物を構築できます。また、たとえ山間部の急斜面や都市部の狭隘地であっても、機械は軽量・コンパクトで貫入された杭・矢板の上に設置できるうえ、振動・騒音が無いため、現場条件に左右されずに施工可能です。このように、流域全体で水害を抑える「流域治水」に対して、圧入工法は様々な状況に適用できます。

※「流域治水」の基本的な考え方」(国土交通省 水管理・国土保全局)
https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/pdf/01_kangaekata.pdf

■施策例①:河道掘削に伴う河川護岸整備工事

北海道函館市の「湯の川」で行われた護岸整備工事です。両岸に壁体を構築して新たな護岸とし、壁体の間の河床を掘削して河川の断面積を増やす工事です。川幅は約3mと、大型重機が入れない狭隘な現場でした。また、住宅地が近接しているため振動・騒音を抑えた施工が求められました。

そこで、コンパクトな施工機械(圧入機・その動力源であるパワーユニット・クレーン・材料の搬送装置)が貫入された杭・矢板の上に設置可能であり、省スペース・仮設レス施工を実現できる圧入工法が採用されました。圧入機は油圧による静荷重で杭・矢板を地盤に押し込むため、振動や騒音が小さい点も評価されました。

施工機械サイレントパイラー F301、CB3-6、UR、PR(2台施工)
材料鋼矢板 25H・45H・50H型 矢板長8.0~13.0m 施工枚数262枚
鋼管杭 杭径600~800mm 板厚12~19mm 杭長11.5~17.0m 施工本数41本

本工事では、鋼矢板だけでは強度が不足するため、ハット形鋼矢板と鋼管杭を組み合わせたコンビジャイロ工法が選定されました。コンビジャイロ工法とは、止水性を有した鋼矢板で壁体を築いた後、側面に高剛性を有した鋼管杭を圧入して組み合わせ壁体を構築する工法です。鋼矢板と鋼管杭を併用して必要な剛性を満たした最適な壁体を構築することで、鋼管杭の本数を減らし、工費の縮減を実現します。また、専用の圧入機を使うことで鋼矢板と鋼管杭を1台の圧入機で圧入できます。

※「コンビジャイロ工法」は、株式会社技研製作所と日本製鉄株式会社の登録商標です。

■施策例②:河川堤防補強工事

高知県高知市の国分川で行われた河川堤防補強工事です。近い将来発生が予測されている南海トラフを震源とする地震の被害想定を踏まえ、河川堤防を補強し地震・津波対策を図る河川事業の一部です。

施工機械サイレントパイラー ECO900
材料鋼矢板 25H型 矢板長9.5m 施工枚数528枚

鋼矢板は堤体内に二列平行に圧入し、頭部はタイロッドで固定しました。鋼矢板は非液状化層まで根入れしており、この支持された鋼矢板が地震時の地盤の変形に抵抗して、堤体の沈下・破壊を抑制します。また、仮に越水や液状化により法面が崩壊しても、堤防の天端高さを維持することができるため、鋼矢板壁自体で堤防機能が保持されます。このように、既存の堤防に対し鋼矢板を圧入することで、外力に対して粘り強く耐えられる構造へと補強することができます。

■施策例③:工場の浸水対策(油流出対策)工事

佐賀県の鉄工所で行われた浸水対策および油流出対策工事です。この鉄工所では過去に大雨による浸水被害に遭っており、被害を繰り返さないために施設全体を鋼矢板による防水壁で囲う工事が行われました。その結果、2年後に大雨被害に遭った際は、工場の周囲は浸水被害に遭いましたが、工場内は被害を免れることができました。

施工機械サイレントパイラー ECO900
材料鋼矢板 10H・25H型 矢板長7.0~11.0m

流域治水プロジェクトは流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方であり、上記のように民間企業がBCP対策の一環として対策を行った事例もあります。

■国土交通省「流域治水オフィシャルサポーター」に認定

このたび、株式会社技研製作所は国土交通省の「流域治水オフィシャルサポーター」に認定されました。当社グループはこれまでも地域住民の生命と財産を守るための水害軽減対策を提供し続け、国土防災に貢献してきました。今後、本来の事業活動ではもちろん、自社のウェブサイトへ流域治水の考え方、必要性、意義を掲載するなど情報発信を通じて、流域治水の普及に貢献してまいります。

※国土交通省の報道発表資料
https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000173.html

■おわりに

流域治水施策において、圧入工法は様々な場面で使われており、実績も益々増えております。工法選定や施工検討でお困りの方は、ぜひ一度下記連絡先までお問合せください!
次回は流域治水に関する施策例紹介の第二弾として、河川の上流側における事例を紹介予定です。お楽しみにお待ちください。

【お問合せ先】
株式会社技研製作所 メールマガジン担当:掛水
東京本社/東京都江東区有明3丁目718号 有明セントラルタワー16
TEL:03-3528-1633
E-MAIL:press-in_mag@giken.com